彩風咲奈があの冴羽獠に!原作ゆかりの場面と宝塚らしさの融合した「CITY HUNTER」-盗まれたXYZ-

彩風咲奈
彩風咲奈

雪組公演『CITY HUNTER』は、北条司の人気漫画を舞台化したことで話題を呼んだ作品だ。個性豊かなキャラクターが次々と登場し、原作ゆかりのエピソードもあちこちに詰め込まれているが、最後は宝塚らしく締め括られる。

朝月希和
朝月希和

原作/北条 司「シティーハンター」 (C)北条 司/コアミックス 1985 ©宝塚歌劇団  ©宝塚クリエイティブアーツ

劇場に足を運んだ原作ファンからも好評を博し、宝塚の裾野の広がりが感じられた作品だった。脚本・演出は齋藤吉正が担当している。

物語の舞台は1989年の新宿、冴羽獠(彩風咲奈)は凄腕のスイーパー(殺し屋)だが、「かわい子ちゃんから」と「心震える依頼」しか受けない主義なので、台所はいつでも火の車。しかも、パートナーの香(朝月希和)の心配を他所に、女の子の尻を追いかけ回してばかりいる。その度に、おなじみ香の「100tハンマー」が頭上に振り下ろされる。

そこに現れたのが、「世界一のスイーパー」の座を獠と競うミック・エンジェル(朝美絢)だった。実はミックは獠の育ての親である海原神(夏美よう)から「獠を倒せ」との依頼を受けていた。しかも、ミックは香のことが好きだと告白し、香の心も揺れてしまう。果たして、獠と海原の対決の行方は?ミックの本心は?そして獠と香の関係はどう決着がつくのか...?

雪組は「日本物の雪組」などと言われるが、漫画やアニメを原作とした作品の経験も豊富な組である。その中で彩風咲奈は『ルパン三世』では次元大介、『るろうに剣心』では斎藤一と、重要なキャラクターを演じてきた。その彩風が冴羽獠に挑む。一見、宝塚の王道をいく作品の方が似合いそうでいて、冴羽獠のような役もはまるところが、彩風の不思議にハイブリッドな魅力だ。

また、香のような「現代の普通の女の子」も宝塚のヒロインとしては珍しいキャラクターだが、朝月希和がこれをナチュラルに演じてみせる。

朝美絢
朝美絢

原作/北条 司「シティーハンター」 (C)北条 司/コアミックス 1985 ©宝塚歌劇団  ©宝塚クリエイティブアーツ

朝美絢演じるミック・エンジェルの抜け感は、獠と好対照だった。捉えどころのないキャラクターを、朝美自身が楽しみながら演じている様子が伝わってきた。原作では物語の冒頭で死んでしまう槇村秀幸が、狂言回し的に要所要所で登場するのは舞台らしい趣向だ。綾凰華が醸し出すさりげない優しさが、いかにも槇村らしい。

そして、まさかこの役をタカラジェンヌができるとは思わなかった海坊主を、縣千が見事にやってのけた。海坊主と美樹(星南のぞみ)が切り盛りする喫茶キャッツアイの場面は、原作と同様に癒しのひと時となっている。

いつもふざけているようで本当は心優しい獠は、意外と女性に人気がある。獠と腐れ縁の野上冴子(彩みちる)は、警察官としての職務全うのため、お色気さえも武器にしていく様が潔い。獠に憧れるグジャマラ王国の王女アルマ(夢白あや)、シティーハンターを追いかけるジャーナリスト冬野葉子(野々花ひまり)など、娘役に見せ場が多い作品でもある。

この他にも、まるでサイボーグのようなジェネラル(真那春人)、どこかお間抜けな劔会会長(久城あす)と構成員たち、お人好しでジャージの似合う政(諏訪さき)、表と裏の顔を冷徹に使い分ける北尾警視正(眞ノ宮るい)、やさぐれていても根は優しい小林豊(彩海せら)など、個性的なキャラクターたちが続々と登場する。

バブル絶頂期の新宿を感じさせるセリフや衣装が面白い。背景に表示される街のネオン広告も、この時代の風俗を感じさせる。宝塚は「平成ベルばらブーム」の時代なのだが、ちゃんと『ベルサイユのばら』の広告も流れる。あちこちに隠された見どころを、スカイ・ステージでも見つけて楽しみたい。

文=中本千晶

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放送情報

CITY HUNTER-盗まれたXYZ-(’21年雪組・東京・千秋楽)
放送日時:2022年10月2日(金)21:00~
チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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