寺原隼人松坂大輔と比べられた日々を回顧「『抜かさなければよかった』って思いました」

写真左から 宮地克彦、寺原隼人
写真左から 宮地克彦、寺原隼人

2002年当時、福岡ダイエーホークスのルーキーだった寺原隼人と、西武ライオンズに在籍していた宮地克彦。そんな2人がスポーツライブ+で放送される「球人たちの記憶」に出演する。同番組は、福岡ダイエーホークス主催試合の中からファンの印象に残っている試合をピックアップし、その試合の当事者たちが映像を見ながら振り返っていく。

3月22日(火)の放送回では、2002年5月29日の「ダイエー×西武」戦を取り上げる。松坂大輔と寺原という甲子園を沸かせた"怪物"2人の初対決となった熱き戦いを、当時試合に出場していた寺原と宮地のW解説を交えながら放送。

今回、収録後の寺原と宮地にインタビューを行い、自身が出場した試合を解説した感想や当時の思い、今シーズン期待しているソフトバンクと西武の選手などについて語ってもらった。

――収録の感想は?

寺原「始まる前は『どんなものなのかな?』って思っていたんですけど、意外と勉強になりました。今の野球の配球と比べて、『バッターに対してこんなに攻めていたのか?』とか、自分が思う感じと違っていて、『今の配球にも取り入れたら面白いんじゃないか』と思ったりして、いい映像を見させていただきました」

宮地「今回の試合は"新ストライクゾーン"っていうのがクローズアップされた年で、"ゲッツー崩し"とか、『ホームだったらタックルはしてはいけない』とか、年々でいろいろルールも変わる中で、球種の多種多様化、球団間の選手同士の関係性など、時代と共にいろいろなことが変わっていて、それに伴って『こんなにも配球が変わっているのか』と驚きましたし、『ピッチャーの心理を加味して配球が変わっているな』というのをすごく実感しました」

――同じ野球でもいろいろと大きな変化があるのですね。

宮地「そうですね。審判に対する態度も、ね」

寺原「あぁ...(苦笑)」

宮地「みんな、まあまあ文句言ってたよね?(笑)。やっぱり真剣に戦っているわけですから、暴言を吐いていた自覚はありました。ただ、裏で(審判と)トイレとかで一緒になったら『宮地、あれボールだった?』『絶対ボールですよ!』『だよなぁ。悪い!』『頼みますよぉ~』みたいな会話があったり、バッターボックスでも『前の打席、絶対ボールだったっすよね?』みたいなボヤきもあったりと、やっぱり人と人なので信頼関係がある上での微妙なコミュニケーションがあったんです。

ただ、今の時代、コミュニケーション不足がいろいろと問題視されていて、あまりにもルールを前面に強調し過ぎてないか、っていうね。『いいお付き合いをするのが苦手な時代になってきて、それに伴ってデリケートなルールは排除していく』といったような、いろいろ目に見えないところに気付くことができた収録でしたね」

――ご自身のプレーに関してはいかがでしたか?

寺原「僕は、ルーキーであれだけインコースにバンバンいっていたのに、年々ベテランになるにつれてかわそうとして、外が多くなったり、変化球が多くなって打たれてしまうという感じだったんですけど、今日、若い時の姿を観て、バンバン腕を振って、甘くてもファールを取れていて、『そこが原点なのかな』って気付かされました」

宮地「自分自身が指導者という立場になった時に、ルーキーの自分を20年後に見るっていうのは、指導者としての自分のスキルアップになるのかもね。今、メンタルのことに関してすごく聞きたがっている子供たちや親御さんがいて、そんな人たちに自分の体験した気持ちを思い出して伝えることができるから。今日観た試合でも、映像では分からない本心があったんだよね?」

寺原「(試合中に)城島(健司)さんに怒られて、『次、フォアボールとか出したらヤバいわ...』って(苦笑)。その場で表情に出すのはアレなんで、下を向いて『ハァ...』って自分を落ち着かせてました」

宮地「"怪物"って、本当に"怪物"じゃなくて人の子であって、周りが"怪物"にしているってことだよなぁ」

寺原「僕の場合は、甲子園に出場した時に"平成の怪物"っていわれている松坂さんの球速を超えちゃったもんだから、"怪物"って言われて、プロに入ってからも松坂さんと比べられて...。松坂さんはプロ1年目に最多勝で、僕は6勝だったんですけど、その時に『(球速を)抜かさなければよかった』って思いましたね」

宮地「僕は(松坂)大輔を1年目から見ていて、その大輔を上回る逸材が現れたといわれている寺原に対して、『どんなもんか見してもらおうやないけ』って感じだったからね(笑)」

寺原「そもそも、僕は松坂さんと同じ土俵に立ててないんですよ。松坂さんは神の領域にいるくらいに思っていたので『僕なんかおこがましい』って思っていたのに、周りから松坂さんと同じくらいの成績を残せると思われて...(苦笑)。でも、1年目で6勝って頑張った方なんですよ!」

宮地「しかも、この試合は中4日で投げてるしな。今だったら問題になってるんじゃない?(笑)」

――寺原さんは、松坂さんとの初対決は、どんな心境だったのですか?

寺原「僕は、松坂さんと投げ合えることが正直うれしかったです。プレッシャーは全然なくて、わくわくした気持ちでした。もちろん、勝ちたい気持ちはあったんですけど、『観てる人は多分みんな、松坂さんが投げたら西武が勝つだろうって思っているだろうから、正直、負けても何も言われないだろう』って思って投げたんで(笑)」

――最後に現在のお話もお伺いできればと思います。それぞれOBとして、ソフトバンクと西武の今シーズン期待している若手選手を教えてください。

寺原「田中正義ですね。鳴り物入りで入ってきて苦労していて、思うようにいかなかったり、けがが多かったりと、気持ちがすごくわかるので。高卒と大卒で立場が違うかもしれないですけど、『ドラフト1位で入って、騒がれたのに...』っていうのがある中で、良い時もあれば悪い時もあって、っていうのが続いてると思うんで、今年こそは一皮むけていかないといけないと思うので、期待しています!」

宮地「2016年まで西武で指導者をさせていただいていたのですが、その時のルーキーの愛斗と山田遥楓ですね。特に愛斗に関してはルーキーの時から『この子は西武の伝統を受け継げるな』っていう予感があったんです。西武の伝統というのは"振り切る"ということで、中島(宏之)から始まり、中村(剛也)、栗山(巧)、浅村(栄斗)と、みんなルーキーの時から結果は出てないんですけど振り切るんですよね。試合で、たとえ三振しても振り切るっていうのを伝統としてやってきた選手は、やっぱりレギュラーを取るんですよ。そういう意味では、愛斗と遥楓は"振り切る"っていうことはできていたので、いずれ出てくるんじゃないかなとずっと思っていたので、今年期待しています。

また、栃木ゴールデンブレーブスでヘッドコーチをやっていた時に岸(潤一郎)を獲りに行っていて、その時は結果的に無理だったんですけど、当時『ピッチャーでダメでも、バッターでいける!』という自信があったんです。その子が今ちょっと出てきているので、どこまで上るか見てみたいですね」

文=原田健

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放送情報

球人たちの記憶#4 ~ダイエー×西武(2002年5月29日開催)
放送日時:2022年3月22日(火)21:00~
チャンネル:スポーツライブ+
※放送スケジュールは変更する場合があります

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