今アツい俳優・山田裕貴が見せたダークサイドの顔

「情熱大陸」に出演し、俳優としての熱い生き方と撮影NGなしの潔さがSNSでも大反響を呼んだ山田裕貴。NHK連続テレビ小説「なつぞら」で主人公なつ(広瀬すず)の幼なじみ、小畑雪次郎役を演じ、愛されキャラとしてお茶の間でも人気がブレイクしたが、"カメレオン俳優"とも"怪優"とも評される山田はいくつもの顔を持っている。

「HiGH&LOW」シリーズではキレたらやばい番長、村山良樹を演じて注目を浴び、現在オンエア中のドラマ「ホームルーム」(MBSテレビ)では妄想癖のある変態美術教師に挑戦。公開中の映画『嘘八百 京町ロワイヤル』では"陶芸王子"として人気の若手陶芸家を演じるなど、実力が評価され、オファーはひっきりなしだ。

その山田裕貴が闇社会の中でサバイバルする主人公を演じたのが、2015年の公開をきかっけにシリーズ化された映画『闇金ドッグス』。迫力の目力で迫真の演技を見せる山田のダークサイドの魅力とは？

■飢えた犬のような鋭い視線に釘付けに

ヤンキー映画『ガチバン』シリーズから派生したのが『闇金ドッグス』だ。山田が演じているのは若くして組長になったものの、わけあって足を洗い成り行きで闇金融業者に転身する安藤忠臣。その第1作目は青木玄徳演じる須藤司(元ホストの中途半端なイケメン役)が相棒として働く前の出来事を描いた物語。イチから出直す主人公・忠臣（山田)が借りたお金を返さない客にイラつき、どん底に追い込まれながらも闇金業界の掟を頭と身体を使って覚えていくという展開だ。

悪徳事務所からお金をしぼりとられている地下アイドル"けろリズム"とアイドルに入れ込むニートの両方が借金まみれになるなど、いかにもありそうなリアリティのある物語の中、忠臣が客から金をとりたてるシーンや、元子分に裏切られ、口の中に拳銃を突っ込まれ血走った目で睨みつけるシーンは迫力たっぷり。野良犬のように飢えた視線で這い上がっていく主人公になりきっている山田の演技が光っている。

■人間味がのぞく山田の奥行きのある表現

シリーズを追うにつれて、プロの闇金業者として忠臣が成長していくのも『闇金ドッグス』の見どころ。女性客に「目が怖い」とビビられてはいるものの、相棒に「忠臣さんって笑うんですね」と驚かれるなど、徐々に人間味をのぞかせていく。

基本、余計なことは話さない役柄のため、視線や表情、仕草などで心情を表現することが多いのだが、小さな居酒屋の店長や動画配信に押されているAV会社の社長、ヤクザ時代の恩人など登場人物とのやりとりが興味深い。

人間が好きで役者を志したと発言している山田の資質なのかもしれないが、夢や欲望やお金に振り回され、我を失っていく客たちに向けられた視線はクールでありながら、その奥には愛と虚無感が混在しているように映る。愛されキャラとは全く違う、孤独で危ない男を演じる山田裕貴にギャップ萌えする人が続出しそうな映画だ。

文＝山本弘子

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