コラム二スト・吉田潮が語る池波正太郎原作「闇の狩人」の魅力

国内&海外ドラマを毎月1本厳選してオススメ。今月は、池波正太郎原作の長篇時代劇「闇の狩人」。「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の各要素と魅力を凝縮し、まさに"池波文学"の集大成と評される傑作だ。

気のいい夫婦が旅先の湯治場で、若い男に遭遇。追っ手の襲撃を見事に躱かわした剣捌さばきを見る限り、侍のようだ。ところがその男は、自分の名前すらもわからぬ記憶喪失状態。どうやらワケありだが、助けた夫婦も実はワケあり。夫は盗賊・雲津の弥平次(中村梅雀)、妻のおしま(風吹ジュン)は長年水茶屋に勤めた身で、夫婦に子供はいない。偶然助けた若い男(福士誠治)に親心がついて、谷川弥太郎と名付けてあげたのが物語の始まりだ。120万人の武士と町人が暮らす江戸が舞台だが、法の網をくぐり抜けて素性を隠す盗賊たちの暗躍と人間模様を描いた長篇時代劇。

弥平次は、江戸で名の通った盗賊・釜塚の金右衛門一党の小頭だ。首領の金右衛門(加藤武)は「貧しい者から盗まず・殺生せず・女を犯さず」の三か条を信条とする盗賊だったが、金右衛門亡き後の後継者は決まらず、仲間の裏切りにも遭う。そんな折、弥太郎が江戸に姿を現すが、裏には香具師の元締で、江戸の暗黒街を牛耳る五名の清右衛門(津川雅彦)が。浪人を子飼いにし、人斬りなどの汚れ仕事を請け負わせている。弥平次は、元盗賊の政七(石橋蓮司)とともに、弥太郎を取り巻く陰謀を知ることになる。

「闇の狩人 後篇」より 弥平次(中村梅雀)ら

(C)2014 時代劇専門チャンネル/スカパー!/松竹

命がけの盗賊稼業から身を引き、余生を妻と静かに暮らそうとしていた弥平次が「盗賊の跡目争い」と「武家のお家騒動」に巻き込まれるが、因果応報と適材適所の結末には思わず唸る。

噛み応えある人情劇の中で、刮目すべきは気風のいい女たち。ガラッパチで口は悪いが、夫への愛が深い風吹が、まあ可愛い。楚そそ々と給仕するでなく、夫と一緒に酒を呷あおる姿がすごくいい。

そして、清右衛門の女房・お浜を演じた波乃久里子の達観。「この世には女っていう、刀よりもよっぽど頼りになるものがあるんだがねぇ」と、暴力と権力にすがる男社会に釘をさす。悪行三昧の夫をたしなめつつ、最後は愛を貫く女っぷりに心底しびれた。

文=吉田潮

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放送情報

【時代劇専門チャンネルオリジナル】
闇の狩人 前篇
※後篇を28(土)後7:00に放送。
放送日時:2020年11月21日(月)19:00~
チャンネル:時代劇専門チャンネル

<「闇の狩人」をもっと楽しむための関連番組>

池波散歩~「闇の狩人」スペシャル~
放送日時:2020年11月1日(日)14:40~
メイキング オブ「闇の狩人」
放送日時:2020年11月21日(土)20:40~
チャンネル:時代劇専門チャンネル

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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