コラム二スト・吉田潮が「逃げ恥」を語る!「恋愛や結婚の違和感を明確に言語化」

「逃げるは恥だが役に立つ」より
「逃げるは恥だが役に立つ」より

昨今の恋愛モノは上下優劣や格差で描きがちだが、このドラマでは男女が対等でフラットな関係。愛という名の強制や呪縛、刷り込みから完全に脱却している。その心地よさは「恋愛や結婚にいつもちょっと違和感を覚える人」の心をわしづかみにした。

新垣結衣が演じる主役・森山みくりは大学院卒で臨床心理士の資格も取得。ところが就活は全滅、派遣で働くも首切りに遭う。家事スキルの高さを生かし、家事代行を請け負った先は、35歳独身男性宅。星野源演じる津崎平匡はIT会社勤務。彼女いない歴=年齢で、自称「プロの独身」。みくりの仕事ぶりを気に入り、お互いの需要と供給が一致した偽装結婚をすることに。

「愛があれば何とかなる」この幻想と呪いを打ち砕いた痛快ラブコメ

小賢しい女と自尊感情の低い男が、雇用関係から恋愛関係へと発展する物語だが、その心模様を丁寧に描く。好きだの愛してるだので都合よく丸め込む話ではない。好意や嫉妬がもたらす不和、愛情と見返りの不均衡、家事分担の不平等に至るまで、幸福のための細かな検証が行われる。その過程に結婚の本質が見えてくるので、独身も既婚者もハッとする瞬間が多いはずだ。

また、みくりの叔母・土屋百合(石田ゆり子)の存在も大きい。49歳独身で男性経験なし。化粧品会社の広報で、部下・梅原ナツキ(成田凌)の信頼も厚い。日本女性が常日頃かけられている「若さ礼賛」という呪いについて語る場面が印象的だ。ひと回り以上年下でイケメンの平匡の同僚・風見涼太(大谷亮平)から告白されたときも、実に大人対応。中高年女性を貶めて嘲笑する文化をきっぱり否定する展開だった。

詮索好きな先輩・沼田頼綱(古田新太)も、ちゃんと恋の物語を紡ぐ。誰も置き去りにしない珠玉のラブコメ、未見の人はぜひ。

よしだ・うしお●'72年生まれ。ドラマ好きのコラムニスト兼イラストレーター。週刊誌や新聞でテレビ・ドラマ評を執筆。時々テレビにコメンテーターとして出演。著書「くさらないイケメン図鑑」など著書多数。ネコ2匹と同居中。

文=吉田潮

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放送情報

逃げるは恥だが役に立つ
放送日時:2021年1月11日(月)11:00~
チャンネル:TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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