アクション、ベッドシーン...30歳の西城秀樹が大人の魅力を放った映画に再注目

昭和を代表する不世出のスーパースター西城秀樹。1972年に歌手デビューを果たした彼は、シングル曲「情熱の嵐」「ちぎれた愛」などの大ヒットにより一躍スターダムに。180センチ以上もある長身に甘いマスクというルックスの良さと抜群の運動神経で、野口五郎、郷ひろみらと共に「新御三家」として人気を博した。また広島県にある米軍基地の近くで生まれ育ったということもあり、少年時代から洋楽ロックに慣れ親しみ、音楽的にも絶大なる影響を受けたという。

ハスキーな声で情熱的に、力強く歌いあげるそのワイルドなパフォーマンススタイルは「絶唱型」と称され、次々とヒット曲を世に送り出した。1975年には日本人ソロ歌手としては初となる日本武道館公演を成功におさめ、1979年の「YOUNG MAN(Y.M.C.A.)」は自身最大の大ヒット曲となった。また俳優としてもテレビドラマの「寺内貫太郎一家」、映画『愛と誠』といった作品に出演、話題を集めてきた。

西城秀樹(「傷だらけの勲章」より)

(C)1986 東宝

そんな彼が28歳となった1983年、それまで所属していた芸能事務所を円満独立。アイドルから大人のアーティストへの道を歩むこととなったが、その流れで注目したい作品が1986年の映画『傷だらけの勲章』である。当時、30歳にして芸能生活15周年を迎えた西城が挑んだ作品で、田中絹代と共演した1975年の映画『おれの行く道』以来、およそ10年以上ぶりの映画出演作となった。監督は『悪魔が来りて笛を吹く』『戦国自衛隊』の斎藤光正。そしてアニメ「ルパン三世」シリーズなどで知られる大和屋竺が脚本を担当したということもあり、ある種の確信犯的な荒唐無稽さと、ミステリアスなムードが全編を彩るアクション映画となった。

また同作は日本映画初の長期エジプトロケを敢行。西城自身、後に「エジプトロケは大変だった」と述懐しているが、それでも劇中では、砂漠が広がる荒涼とした景色や、スフィンクスやピラミッドなどがそびえ立つ歴史的な趣など、エキゾチックなムードが楽しめる。ちょうど日本がバブル期に突入し始めたという時代背景もあるだろう。

(C)1986 東宝

物語はピラミッドがそびえ立つエジプトの砂漠で、東光開発の倉田社長が殺害されるところから始まる。やがてその事件を追っていた2人の刑事は、その事件をめぐる裏側を知り、翻弄されることになる...。西城が演じるのは事件を追う若き刑事・都築。事件解決に情熱を傾けながらも、次々と明らかになる真実に苦悩するという役柄だ。俳優としても脂がのってきた時期で、身体能力を活かしたアクションにも果敢に挑戦している。

そしてそんな都築とバディを組むベテラン刑事・大貫に名優・中村嘉葎雄。数々の修羅場をくぐり抜けてきたであろう男のすごみと、それゆえにかもし出される得体の知れない哀しみのようなものが匂い立つ。さらに倉田社長夫人・喜枝を演じるのは歌手のちあきなおみ。彼女が醸し出す妖艶かつアンニュイな雰囲気はこの映画に独特のムードをもたらしている。その他、成田三樹夫、萩原流行、小林稔侍、左時枝などそうそうたる面々が脇を彩っているのも楽しい。

何と言ってもファンの度肝を抜いたのは、朝加真由美演じる啓子と繰り広げた冒頭の濃厚なベッドシーンであろう。ファンの間からも「ヒデキの映画は観たいけど、観る自信が無い」といった反響を巻き起こすほどの体当たりの演技となったが、西城自身は「別に恥ずかしいことはない」と話していた。

2018年5月16日、西城は逝去。多くのファンが悲しみにくれたが、その中で劇場上映イベントの開催リクエストサービス「ドリパス」では、もう一度スクリーンで観たい作品として、本作へのリクエストが多く寄せられた。そういう意味でも、役者・西城秀樹のターニングポイントとなった作品として本作に注目しておきたい。

文=壬生智裕

この記事の全ての画像を見る

放送情報

傷だらけの勲章
放送日時:2021年4月15日(木)20:15~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

詳しくはこちら

キャンペーンバナー

関連記事

関連記事

記事の画像

記事に関するワード

関連人物