映画コメンテーター・有村昆が選ぶ、「バットマン」歴代映画3選

「バットマン(1989)」より 
「バットマン(1989)」より 

「バットマン」4部作やリブート3部作などで多様な描かれ方をしてきたバットマン映画。大ヒットが記憶に新しい番外編「ジョーカー」に続くシリーズの楽しみ方を有村昆さんが紹介する。

有村さんがシリーズの基礎を作った"金字塔"として挙げるのが'89年の「バットマン」だ。

「ティム・バートン監督の『バットマン』は歴史を変えた特筆すべき1作で、これがなければ後の作品も生まれていません。バットマンという素材を監督がどう料理するか、ここに注目してシリーズを見ていくと面白いんですが、バートン監督が描く『バットマン』はゴッサムシティが退廃的かつ陰湿で、世界観はレトロゴシック、そして弱者や異形への愛がありました。ジョーカー役のジャック・ニコルソンの演技が秀逸ですが、実は物語の主役は悪役であるというのがバートン版の特徴ですね」

「バットマン フォーエヴァー」より

© WarnerBros. Entertainment Inc.

ジョエル・シュマッカー監督にバトンタッチした「バットマン フォーエヴァー」はシリーズでも"忘れられない"1本。

「バットマン映画化の歴史は、迷走の歴史でもあります。それを象徴するような『―フォーエヴァー』は、路線が定まっていないからこそ生まれた個性的な作品。けれん味たっぷりでカラフルな世界観はシュマッカー監督ならではの悪趣味です(笑)。ヴァル・キルマー、トミー・リー・ジョーンズ、ジム・キャリー、ニコール・キッドマンと、超オールスター映画で、同じバットマンという素材でも、監督によってこうも変わるのか!と、ひと目で分かりますよ」

「ダークナイト」より

© Warner Bros. Entertainment Inc. BATMAN and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics.

シリーズの中でも有村さんのいち押しは、リアル路線に方向転換したクリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト」だ。

「旧約聖書の『ソドムとゴモラ』の記述に近いものを感じるんですが、乱れた街を戒めるために神がその街を破壊する天使を遣わす、それが『ダークナイト』のジョーカーです。一方、まだ人間の可能性を信じようとして、その破壊を止めるのがバットマン。つまり、迷いのない悪人と迷いのある善人の戦い。バットマンが悪に染まるかもしれない、バットマンの行動こそ悪なのかもしれないという"表裏一体"が『ダークナイト』の魅力です。このノーラン版がひとつの到達点なので、番外編として距離を置き、"貧困"や"現実と妄想"を掘り下げた『ジョーカー』は大正解。ゴシック調のニコルソンに対して、"内なる狂気"を表現したヒース・レジャー、そして誰も超えられないと思っていたジョーカー像を更新したホアキン・フェニックスと、新・旧のジョーカー比較も面白いです」

「ジョーカー」より

© 2019 Warner Bros. Entertainment Inc. TM & © DC Comics

ありむら・こん●'76年7月2日生まれ、マレーシア出身。年間500本の映画を鑑賞。最新作からB級映画まで幅広い見識を持つ。YouTubeでは「有村昆のシネマラボ」で本音の映画批評を配信中。

聞き手=山崎ヒロト(Heatin' System)

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放送情報

バットマン(1989)
放送日時:2020年7月4日(土)19:45~
チャンネル:WOWOWプライム

バットマン フォーエヴァー
放送日時:2020年7月24日(金)13:45~
チャンネル:WOWOWシネマ


ダークナイト

放送日時:2020年7月4日(土)18:15~ ほか
チャンネル:ザ・シネマ

ジョーカー
放送日時:2020年7月11日(土)21:00~ ほか
チャンネル:スターチャンネル1 ほか
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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