将棋界の歴史に残るシリーズと称される、藤井聡太王将─羽生善治九段の第72期ALSOK杯王将戦七番勝負がいよいよ始まった。開幕局で羽生は一手損角換わりを採用。二日目に突入しても難解な戦いが続いていたが、徐々に藤井がリードを奪っていき、最後は差を付けて快勝となった。
藤井は現在五冠(竜王・王位・叡王・王将・棋聖)を持ち、すでに将棋界の第一人者と言える。タイトル戦には過去11回登場し、負けなしと抜群の安定感を誇る。フルセットになったことも1回しかなく、番勝負で負ける姿が想像できない。さらに棋王戦でも挑戦権を獲得しており、この冬は六冠目を目指す戦いとなる。
一方の羽生は2018年に無冠に転落、さらに昨年度はA級からも陥落するなど、この数年はかつての成績と比べると低迷していた。しかし今年度は難関の王将リーグで全勝し、2年ぶりにタイトル戦登場を決める。タイトル通算は歴代1位の99期で、大台となる100期の記録も掛かっている。
すれ違ってしまうのではないかと言われ始めていた将棋界の二大スターだが、ついにタイトル戦での顔合わせが決まった。かつて思い浮かべていたのは羽生に挑戦する藤井の姿で、現実は立場が逆ではあったが、この際細かいことは気にせずともいいだろう。二日制七番勝負という最高の舞台での戦いが決まった事を感謝したい。何よりも羽生自身がこのカードを実現させられたことを喜び、楽しみにしていることだろう。
開幕前の対戦成績は藤井から見て7勝1敗と差がついている。これは相手が羽生に限ったことではなく、トップ棋士が相手でも8割前後の勝率を保ち続ける藤井の強さは驚異的だ。戦型は羽生が先手の場合は藤井の2手目△8四歩は決まっているので、角換わり、相掛かり、矢倉から選ぶことになるだろう。
一方、藤井が先手の場合、羽生は2手目△8四歩以外の変化球を投げる可能性もある。事実、第1局はやや意表の一手損角換わりだった。羽生は戦型の幅が広く、過去の対戦でも藤井相手に横歩取りや振り飛車を使ったことがある。羽生のあげている1勝も横歩取りの後手番でのものだ。
続く第2局は羽生の先手番。藤井はデビューから安定して高勝率を誇るが、近年は先手番での勝率が際立っている(基本的に将棋は先手がわずかに有利とされる)。羽生としては先手番の対局を落とすと厳しいので、何とか第2局を勝って追い付きたいところだ。第2局は1月21(土)、22日(日)に行われる。一ファンとしても、一局でも多く観たいシリーズだ。
文=渡部壮大
放送情報
【生】第72期 ALSOK杯王将戦 七番勝負 第2局 藤井聡太 vs 羽生善治九段
放送日時:2023年1月21日(土)、22日(日)8:45~
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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