「刑事吉永誠一 涙の事件簿」は、2004年から2016年までテレビ東京・BSジャパン共同制作で放送された刑事ドラマだ。主演は船越英一郎が務め、情に厚く涙もろい神奈川県警捜査一課の熱血刑事・吉永誠一(船越)が、さまざまな事件を解決すべく奔走する姿を描いた作品である。
吉永は事件解決に燃える情熱的な刑事だが、私生活では家庭を大切にする男でもあり、12歳年下の妻・照子(中山忍)との夫婦愛を描いたドラマでもある点が見どころだった。当初は「熱血刑事・吉永誠一」のタイトルで、2時間の単発ドラマとして2004年に放送がスタートした。同年12月に「刑事吉永誠一 涙の事件簿」のタイトルになり、2時間ドラマとして12作が放送された後、2013年10月期から「金曜8時のドラマ」の第1作として同タイトルのまま連続ドラマ化されている。単発ドラマで長期にわたってのシリーズ化から連続ドラマへの移行という経緯は、まさに同作の人気の高さの証明といっていいだろう。
この連続ドラマ版では、小泉孝太郎演じる新キャラクター・貴貴一が吉永の相棒として登場し、吉永は新たなバディと深い絆を結んでいく設定となっている。2時間ドラマからレギュラーになった刑事ドラマ、しかもバディものとなると、テレビ朝日系「相棒」シリーズを思わせるが、本作は決して相棒の二番煎じなどではない、魅力のある作品に仕上がっている。
かつて「刑事の鏡」と言われた鑑貴志(古谷一行)は、神奈川県警の名刑事だったが犯人に撃たれて殉職した。彼は吉永がまだ駆け出しだった頃の班長で、いわば刑事としての師匠に当たる上司だった。だが狭心症を患っており、5年前に犯人との揉み合いの最中に発作が起こり、拳銃を奪われた末に射殺されている。鑑貴一は、その貴志の息子であり、悲しい過去を背負いつつ、吉永とも因縁をもつ人物として描かれている。
鑑貴一の登場により、ドラマの設定に深みが与えられ、骨太な人間ドラマとしての骨格がより明確になったと思われる。複雑な過去を持った人物である鑑貴一に扮した小泉の演技も表現力が増して、繊細な人物像を感じさせる。熱血漢である意味わかりやすい人物である吉永を演じる船越との好対照ぶりが印象的だった。
連続ドラマ版の第1話では、地下駐車場で女性の死体が見つかり、非番の吉永(船越英一郎)を新しい相棒の鑑貴一(小泉孝太郎)が迎えにくる。これが2人の出会いとなるわけだ。被害者女性は占い師の須永弥生(玄覺悠子)で、背後から鋭利な刃物で刺されていた。弥生のハンドバッグを持ち去る男が防犯カメラに映っており、怨恨や痴情のもつれのほか、強盗の線でも捜査をすることになる。吉永らは弥生が働いていたビルへ向かった。すると1週間前に三上達也(夏原諒)という男が訪ねてきて弥生と言い争いをしていたことが判明する。さらに弥生と暮らしていた黒木好夫(橋本さとし)と弥生が詐欺罪で告訴されていたことが判明。やがて新たな殺人が起こり、複雑化して前後編にわたってドラマが続いていく。
この第1シリーズの終了後も、2014年に続編となる第2シリーズが放送され、その後2016年に再び2時間ドラマに戻って、同年12月に放送された「刑事吉永誠一 ファイナル」をもってシリーズが完結した。
長期にわたるシリーズ作の転換期にあたる、連続ドラマ「刑事吉永誠一 涙の事件簿」が、チャンネル銀河で放送される。本作は大人の鑑賞に堪える、見ごたえ十分な刑事ドラマであり、上質な作品であることは保証できる。この機会にぜひチェックしてほしい作品である。
文=渡辺敏樹
放送情報
刑事吉永誠一 涙の事件簿
放送日時:2023年3月5日(日)11:00~
チャンネル:チャンネル銀河 歴史ドラマ・サスペンス・日本のうた
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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