コラムニスト・ペリー荻野がシリーズにおける「必殺仕置人」を語る「現在まで綿々と続く必殺シリーズの礎となった作品です」

金で殺しを請け負って虐げられた人々の恨みを晴らすアウトローを描く人気時代劇「必殺」シリーズ。「必殺仕掛人」(1972年)を皮切りに、現在進行形で新作が生まれている。その中で第2作「必殺仕置人」(1973年)がその後のシリーズに与えた影響について、時代劇に詳しいペリー荻野さんに伺った。

■山崎努、沖雅也、野川由美子ら昭和名優が見せる圧巻の演技

「必殺仕置人」は、藤田まこと演じるシリーズの顔・中村主水(もんど)の初登場作品としても、記念すべき重要な一作となっている。

「念仏の鉄(山崎努)を中心に、二枚目の棺桶の錠(沖雅也)、姉御肌の鉄砲玉のおきん(野川由美子)、そして三枚目のおひろめの半次(津坂匡章・現秋野太作)を配した仕置人チーム。このレギュラー陣のバランスは以降も踏襲されました。現在まで綿々と続く必殺シリーズの礎となった作品。本作の主水は主役ではありませんが、北町奉行所の役人で、チームの参謀役的な位置付けでした」
 
本作の魅力は数多いが、レギュラー陣の演技と存在感が群を抜いていたとペリーさんは語る。

「山崎さんの深みと迫力。沖さんの美しさは、今の若手俳優の誰をも上回っています。野川さんのせりふ回しの巧みさも素晴らしい。秋野さんの味わい深い演技も独特の魅力がありました。極め付きは、やっぱり藤田さん。私が藤田さんに取材した際にお聞きしたのですが、主水役は急に決まって演技プランもないままに、慌てて撮影に入ったそう。監督からの駄目出しも多く、当初は藤田さんも役作りに悩んでいたらしいです」
 
本作の主水は、表情も険しくどちらかといえば悪人顔に見え、以降の主水とは異なる印象も。

「ただ、本作でも妻や義母にいびられる場面は既に健在で、クスリとさせてくれるし、主水の魅力は十分に伝わってきます。殺陣はきれいな立ち回りではなく、主水はあえて後ろから斬りかかり、ダークヒーローを感じさせます」

「必殺」シリーズ第一作目の「必殺仕掛人」
「必殺」シリーズ第一作目の「必殺仕掛人」

「必殺仕掛人(TVシリーズ)」©ABCテレビ/松竹


そんな主水や仕置人たちを際立たせる立場で毎回登場する、悪役の奮闘も大いに見どころだ。

「本作には当時を代表する素晴らしい俳優さんが多数出演しています。第1話に登場する大滝秀治さんの目つきとかが本当に悪くて(笑)。その後も中尾彬さん、神田隆さん、伊丹十三さんらが登場し、見事なワルっぷりを見せてくれます。圧巻は第22話の伊藤雄之助さん。盗賊の首領を演じているのですが、ほれぼれするほどの悪役ぶりは必見です」

念仏の鉄の殺しの場面は、悪人の骨を外して絶命させるが、それをレントゲン映像で描写する演出が当時は大いに話題になった。

「スタッフが会議で案を出し合って決まったそうですが、インパクト抜群の映像でした。照明の使い方なども、本当に凝った映像で、本作に懸けるスタッフの意気込みも感じさせます。仕置人がなければ今の必殺シリーズはなかったと言っても過言ではない。長い時代劇の歴史に残る、極めて重要な作品なのは間違いないですね」

ぺりー・おぎの●1962年生まれ、愛知県出身。大学在学中よりラジオパーソナリティーを務め、コラムを書き始める。時代劇のスペシャリストで、取材件数は日本随一。大河ドラマ・時代劇の魅力をテレビ・ラジオおよび全国各地で普及している。

取材・文=渡辺敏樹

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放送情報

必殺仕置人

放送日時:4月21日(金)16:00~
放送チャンネル:時代劇専門チャンネル

必殺仕掛人
放送日時:4月4日(火)01:00~
放送チャンネル:時代劇専門チャンネル

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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