沢口靖子が「鉄の女」を演じた王道ミステリー「無敵の法律事務所 弁護の鉄人 橘 明日香」

女優・沢口靖子といえば「科捜研の女」シリーズ(テレビ朝日系)があまりにも有名で、彼女の代名詞的な存在だが、実は法廷ドラマでも多くの傑作に主演している。2010年にスタートした「イソベン・里村タマミの事件簿シリーズ」(TBS系)と「検事・霞夕子シリーズ」は、ともに沢口が主演した作品で評価が高かった。その2作品に共通しているのが、原作者が「サスペンスの女王」こと夏樹静子であることだ。そして沢口が主演した夏樹静子原作のミステリードラマで、単発作品ながら注目すべき作品がもうひとつ。それが、2015年にテレビ東京系で放送された「無敵の法律事務所 弁護の鉄人 橘 明日香」だ。沢口は同作の主人公である弁護士・橘明日香を演じている。

五十嵐正樹(榎木孝明)と共に法律事務所を営んでいる橘明日香(沢口靖子)は、信頼できる依頼人のためなら徹底して戦うのがポリシーだが、ひとたび信頼関係が崩れると担当を降りてしまう一面をもつ。ある日、都内で発生した殺人事件の容疑者・貝塚陽子(酒井美紀)の弁護人として接見したところ、陽子は被害者の東郷宏康(久保龍一)が5年前に起こした自動車事故の犠牲者の母親だったことがわかる。娘を死なせた東郷に恨みを持ち、しかも事件の直前に東郷と口論していた。凶器と思われるナイフには陽子の指紋も検出され、物的証拠もあり、彼女にはアリバイもなかった。

弁護側には絶対的に不利な状況だが、陽子は容疑を全面的に否認。明日香は、5年前の事故で息子を亡くしたデザイン会社社長・笹井玲子(東風万智子)に会いに行く。彼女には東郷が殺害された時刻にアリバイがあり、タクシーで実家の新潟へ移動中だったという。だが、タクシーの車載カメラの映像を見た明日香は不自然な点を発見した。一方で、明日香のパートナーである五十嵐は、大手企業・ブラウングループの会長秘書・望月(片岡信和)から、会社に中傷の手紙が届いているという相談を受けていた。その会話を何気なく耳にした明日香は、玲子への疑いを深めて新潟に飛ぶ。やがて5年前の事故の関係者が失踪するという新たな事件が発生するが...。

この後もストーリーは二転三転し、最後までハラハラする展開となって視聴者をくぎ付けにするのだが、本作のキモはやはり主人公である沢口靖子の魅力と、彼女を支える五十嵐を演じる榎木、さらに助手として活躍する事務所のスタッフ・鎌田事務長を演じる片岡鶴太郎というベテラン俳優の活躍だろう。弁護士ドラマとはいっても、本作は謎解きミステリーであり、明日香が名探偵役で鎌田がワトソン的な役割を果たしている。鎌田を演じる鶴太郎は、軽妙でコミカルな演技を見せ、お笑い番組で一世を風靡した往年の姿を思い出させてくれる。それでいて、シリアスな場面では味わい深い重厚さを醸し出し、硬軟織り交ぜた芝居で沢口をサポートしてくれる。出番こそ多くないが、人間味あふれた榎木の存在感は見事で、さすがベテランという風格を見せている。

ストーリーも巧みで、5年前の事故に絡む複数の関係者が登場し、後半には事件には無関係と思われたブラウングループも絡み、事件のカギを握る「赤い帽子の女」のトリックなど、様々なシークエンスが散りばめられたミステリーの王道的な展開は見ごたえ十分だ。

冷静沈着な仕事ぶりで「鉄の女」とも称される明日香を演じる沢口は、「科捜研」に代表される彼女のイメージを外さない上で、本作ではこだわりが強くて少しクセもあるが、有能で正義感が強く、なおかつ可愛らしさのある弁護士象を独自の魅力と共に表現している。

文=渡辺敏樹

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放送情報【スカパー!】

無敵の法律事務所 弁護の鉄人 橘 明日香
放送日時:12月18日(月)21:00~
放送チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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