古川琴音の感情表現が素晴らしい、映画「偶然と想像」第一話「魔法(よりもっと不確か)」

主演を務めた2018年製作の短編映画「春」(2021年公開)で見せた繊細な演技が、国内外で高い評価を受けた古川琴音。2019年に公開された若手トップクラスの俳優が揃った映画「十二人の死にたい子どもたち」でゴスロリ少女を演じて一気に注目の若手俳優になった。その後も連続テレビ小説「エール」(2020年NHK)やドラマ「コントが始まる」(2021年日本テレビ系)など話題作に出演し、個性的でありながら役柄によって印象が変わる演技で実力派俳優の一員となった。

そんな彼女が出演した2021年公開の映画「偶然と想像」が4月23日(火)に日本映画専門チャンネルで放送される。第74回カンヌ国際映画祭で脚本賞など4冠を獲得した濱口竜介が監督した3つの物語が展開する短編集で、その第一話「魔法(よりもっと不確か)」で古川はヒロイン芽衣子を演じている。

仲の良いヘアメイクのつぐみ(玄理)から最近出会った気になる男性(中島歩)とののろけ話を聞いたモデルの芽衣子が、ある偶然に気づいていくというストーリーが会話で紡がれていく。
最初は笑いながら他愛のない恋バナに花を咲かせているが、男性の過去の恋愛話を聞いて何かを悟っていく芽衣子。古川は、一瞬曇った表情を見せたり、隣にいるつぐみに勘づかせないように取り繕った相づちを打ち目を泳がすなど、偶然と出合った瞬間の驚きと戸惑い、そして好奇心を見事に切り取った演技を見せている。それはまさしく、芽衣子が今、事実に直面しているときの顔であり、芝居とは思えないリアルさがそこにあるのだ。

リアルな演技の裏には濱口監督の独特な演出方法もあり、自然とセリフが体に染みこむようにリハーサルもかなり時間を掛けて行われたという本作。後に古川はこの経験を経て、カメラの前で自由になり、自分の気持ちが乗ったセリフが出てくるようになったと語っている。

その成果なのか、本作では芽衣子の理屈では説明できない、独占欲と嫉妬、愛情が入り混じったような感情が見事に表現され、約30分のドラマとは思えない濃厚さと、さまざまな感情を味わうことができる。本作では、言葉で表現できない感情が入り交じる一人の女性がそこにいて、ドキュメンタリーのように人間そのものが映っている。芽衣子を小悪魔という一言で片付けられない人間くささがそこにあるのだ。

本作は第71回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、最高賞に次ぐ審査員グランプリの「銀熊賞」を受賞するなど海外からも高く評価され、名実共に実力派俳優の仲間入りを果たした古川。それ以降も、ドラマや映画などコンスタントに出演し、2024年4月からは連続ドラマ「ACMA:GAME アクマゲーム」(日本テレビ系)や6月公開の映画「言えない秘密」など話題作の出演が続いている。

作品によってさまざまな顔を見せる彼女は、本作で濱口監督から教わったことを土台に芝居をしているという。彼女にとって転機となり、多くの人が彼女の才能と魅力に気づいた「偶然と想像」で、古川の演技とリアリティーの境目を楽しんでほしい。

文=玉置晴子

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放送情報【スカパー!】

偶然と想像<PG-12>
放送日時:4月23日(火)0:05~
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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