永作博美のキュートさと迫真の心情表現から目が離せなくなる!東野圭吾原作のドラマ「東野圭吾スペシャル 11文字の殺人」

福山雅治が主演した「ガリレオ」シリーズや、少年犯罪被害者の苦悩を描いた「さまよう刃」など、これまでに多くの作品が映画化、ドラマ化されている東野圭吾のミステリー小説。実写化に際しては配役にこだわって制作されることも多々あり、2011年に「東野圭吾3週連続スペシャル」としてTVドラマ化された3作品「11文字の殺人」「ブルータスの心臓」「回廊亭殺人事件」も、豪華なキャスティングが話題となった。

「東野圭吾3週連続スペシャル」の第1弾として放送されたのは「11文字の殺人」で、主演は実力派女優として知られる永作博美が務めた。ここでは主人公の推理作家・結城梨花子を演じた、独特の魅力に満ちた永作の演技について見ていきたい。

物語は、結城が恋人の川津雅之(長谷川朝晴)と一緒に、満開の桜の下のオープンカフェで会話をしているところから始まる。結城は明るくて楽しげで、川津がふと「狙われているみたいなんだ...命」と漏らしても、あまり心配するような様子はない。それどころか川津のケーキのイチゴを奪って食べ、「意外と気、小さい?」とからかう。その仕草には、よく「小悪魔的」と評される永作のキュートさが溢れている。

しかし、そんな結城を不幸が襲う。恋人の川津が水死体となって発見されるのだ。カフェで刑事と話をする時の結城は、まるで一気に歳を取ったような様子で、悲しみと心労がのしかかっているのがよく分かる。また、カフェから出た時、満開の桜を見上げてから泣き崩れるまでの表情の変化はあまりに見事で、見ていて胸が締め付けられるほどだ。

小悪魔だったり、迫真の心情表現だったり...と、ドラマが始まって間もないうちに引き込んでしまう永作の演技力は流石と言うほかない。そして結城は川津の死の真相究明に乗り出し、さらには、結城が関わった人々が次々に殺されていく連続殺人事件へと発展する。事件の謎が深まっていくにつれ、永作の演技もますます冴えていく。

結城をサポートする編集者・萩尾冬子(星野真里)が作ったきのこ雑炊を、頬張って幸せそうに微笑むシーンはほのぼのするし、橋の上で過去の川津の姿を思い出した後、それを振り払うように首を振る仕草には励ましてあげたくなるような健気さがある。過酷な事件を扱っていても重くなりすぎないのは、永作の演技とそういったシーンが物語にうまく融合しているからだろう。

また何者かに階段から突き落とされてケガを負った後、「これではっきりした」と萩尾に語るシーンでは、深い霧の中にある真実を探るような眼差しになり、作家をやめようと考えたエピソードの回想の後には、自分の中に沈む悲しみと向き合っているような絶妙な表情を見せる。

明るくてキュートで行動的、しかし心に悲しみを抱えている。そんな結城梨花子という人物像が永作の演技によって、物語が進むほどに伝わってくる。また事件に関わっている山森スポーツプラザ社長・山森卓也を演じる石黒賢、その秘書の春村志津子を演じる安達祐実らの演技も秀逸で、人間の本質を描く東野圭吾の小説の魅力もしっかり味わうことができる。

永作は本作のラストについての、インタビューで「人の臆病さをじんわり思い知らされる結果が、待っています」と語っている。川津の死にはいったいどんな謎が隠されているのか。永作をはじめ名優たちの演技を味わいながら、ラストまでじっくり楽しんでほしい。

文=堀慎二郎

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放送情報【スカパー!】

東野圭吾スペシャル 11文字の殺人
放送日時:2024年5月3日(金)17:15~ほか
チャンネル:WOWOWプラス
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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