渡部篤郎小池栄子の熱演が、堤幸彦監督の初の時代劇作品「巷説百物語 狐者異」にもたらしたもの

独特な雰囲気をつくり出す俳優・渡部篤郎は、シリアスからコメディーまで数々の作品でさまざまな役を演じながらも、必ず彼にしか出せない味を加えて視聴者を魅了し続ける稀有な存在だ。一方、バラエティーから教養番組に至るまで多方面で活躍する女優・小池栄子は、映画、ドラマ、舞台と引っ張りだこで見ない日はないほどの売れっ子。そんな2人が共演した作品が、9月7日(土)に時代劇専門チャンネルで放送されるドラマ「巷説百物語 狐者異」だ。

同ドラマは、京極夏彦による時代小説シリーズを堤幸彦監督が実写化したもので、堤監督にとって初の時代劇作品。江戸時代末期の江戸を舞台に、困難な問題を妖怪になぞらえて解決する小悪党たちの活躍を描く。

何度殺しても生き返る悪党・祇右衛門(谷口高史)は斬首されるも、町では彼のおどろおどろしい噂があふれかえる。そんな中、百物語を書くことを目標にしている作家・百介(吹越満)は、小股潜りの又市(渡部)、山猫廻しのおぎん(小池)、事触れの治平(大杉漣)ら無宿人たちと知り合う、というストーリー。

オリジナリティあふれる筆致で独自の怪しい世界を展開する京極作品を、堤監督が彼らしい斬新な映像表現とユーモアで、クールでスタイリッシュな作品に昇華し、怪談&謎解きという原作の魅力を、三次元としてまた違ったかたちの新たな魅力を生み出すことに成功している。そんな中で、渡部と小池の演技が堤監督の演出を超えて、三次元ならではの魅力を作品に与えている。

又市は舌先三寸で人をたぶらかすことを得意としており、手癖が悪く、つい他人の物を盗む癖のある男で、まともな百介と並ぶと怪しさ満載なのだが、渡部はどこか憎めない小悪党として熱演。愛嬌のあるキャラクターとして演じながら、"怪しさ"と"親しみやすさ"が同居する不思議な魅力を持った男を作り出し、三次元の中でありながら二次元的な要素で"怪しさ"を醸し出している。この"怪しさ"と"親しみやすさ"という二律背反な特徴を同居させる演技力こそ、渡部ならではの役者としての魅力といえるだろう。

対するおぎんは、斬首された祇右衛門と遠からぬ過去があり、又市にも百介にも悟られないよう単独で行動しようとするのだが、小池は"過去に囚われているおぎん"から"真実が明らかになっていくにつれて変わっていくおぎん"までの変化をしっかりと表現し、役の人間的な繊細な変化を見せることで作品にリアリティーをもたらしている。

堤監督による映像表現とユーモアを礎に、渡部が"怪しさ"を、小池が"リアリティー"を付与することで、怪しさ満点のおどろおどろしい京極作品を見事な映像作品として生まれ変わらせている。渡部&小池の熱演から、ドラマ版ならではの魅力を感じてみてほしい。

文=原田健

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放送情報【スカパー!】

巷説百物語 狐者異 (主演:渡部篤郎)
放送日時:9月7日(土)21:40~
※第2弾「巷説百物語 飛縁魔」は9月14日(土)21:50~放送
放送チャンネル:時代劇専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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