「磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜」は週刊少年ジャンプで連載されたギャグ漫画でアニメ化もされている。漫画は浮世絵調で書かれておりいわゆる王道の少年漫画が多いジャンプの中で独特な存在感を放っていた。
今回、本作が読み切りとして掲載されてから実に11年越しにドラマ化と相成ったわけだが、基本的に漫画のエピソードをしっかりとなぞりつつも遊び心も忘れていない。例えば1話(1話は9/30(月)17:00までWOWOWオンデマンドにて無料配信中)では冒頭からドラマの制作発表を題材としたストーリーが展開され、あまりにもメタ的な内容に驚く視聴者も多いだろう。江戸時代を舞台としたコメディドラマということで現代とは違う環境に少し気後れしてしまいそうな視聴者もしっかりと物語に取り込んでいく脚本・監督の細川徹は流石である。加えて本作及び原作は完全に歴史をベースにしているわけではなく、念頭にコメディがある。その為、物語上必要な歴史的用語は説明が入り、江戸時代には無かったアイテムも登場する。この細川の遊び心と原作へのリスペクトにより、このドラマは江戸を舞台にしているとはいえ令和を生きる我々が気軽に笑いにいけるそんな作品なのだ。
■コメディで輝く杉野遥亮
だが、その素直に笑えるという点で忘れてはいけないのが主演を務める杉野遥亮の好演だ。細川は杉野がいなければ実写化は不可能だと思ったかもしれないと語っているが監督に言わしめるのも納得の姿を我々は観ることができる。
というのも杉野演じる磯兵衛は確かに武士ではあるのだが、観ていると今を生きる我々となんら大差ない等身大の側面がみえてくる。それは基本的にどの話のエピソードでも共通していて「なまけてしまう」といった「人に見せることが出来ない側面」があるということだ。
それが偶々江戸に生きている磯兵衛は武士道を極めるふりであったり春画を隠したりであったりと時代に則した行動になっているだけで、我々と何も変わらない。しかし、本質が変わらなくとも江戸時代を我々は文面でしか知らない。
そんな中でも当時と今の笑いのポイントを結びつけ振る舞いとして見事に笑える芝居を作っているのが杉野だ。クスリと素直に笑ってしまう説得力を出している彼の芝居こそが本作の根幹の一つなのだろう。本作は1話が約25分だが2~3エピソードが1話に収録されている。もし気になった方は是非10分でも「磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜」を覗いてみて欲しい。
文=田中諒
放送情報【スカパー!】
磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜 1~9話一挙放送
放送日時:9/12(木)12:00~
放送チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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