牧島輝&有澤樟太郎&桜井玲香が豊かな表現で魅了 ドラマティックな音楽で彩られた音楽朗読劇『HYPNAGOGIA~ヒプナゴギア~』
- 俳優・女優
- 2024.10.22
room NB(ソニーミュージックグループ)と劇作家・演出家の藤沢文翁が立ち上げた音楽朗読劇ブランド、READING HIGHの新プロジェクト「READING HIGH noir」。その第1回公演となる『HYPNAGOGIA~ヒプナゴギア~』が、東京・イイノホールにて2日間4公演にわたり上演された。
同公演にはミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン や『刀剣乱舞』、舞台『キングダム』、「セトウツミ』など多数の作品に出演する牧島 輝、ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ、『ジャージー・ボーイズ』、舞台『キングダム』や現在ドラマ『オクラ』(CX系)にも出演中の有澤樟太郎、ミュージカル『レベッカ』や『DOROTHY(ドロシー)〜オズの魔法使い〜』、映画『シノノメ色の週末』のほか、数多くのミュージカルやドラマで主演・ヒロインを務める桜井玲香といった実力派俳優が一堂に会し、歴史ある作品を彩った。
19世紀のイギリスを舞台に、医者(牧島 輝)が訪れたコンサート会場で、かつて無名のピアニストだった親友(有澤樟太郎)と数年ぶりの再会を果たすところから物語は始まる。静謐な空気に包まれた会場に雨音が流れ始めると、有澤の繊細な歌声が響き渡り、一瞬にして作品の世界へと誘われる。
軍医として都を離れていた医者が、行方不明と思われていた幼なじみであり親友のピアニストとコンサートホールで再会する。 ピアニストは3年前に街外れのバーで天才的なピアノの腕と作曲の才能を開花させ、今では人気の天才者として世間を賑わせていた。しかし、医者は親友の体は以前にも増してやせ衰えていることに気づく。思い出話に花を咲かせていると、ピアニストが突然倒れてしまう。ピアニストにはある秘密があった―。
物語の語り部を務めた牧島は、力強い語りで物語を導いていく。目の前に起こっていることが夢なのか現実なのか分からずに苦しんでいるピアニストを、必死に現実に引き留めようとする姿はたくましい。だが、次第にピアニストの夢の中に存在する女にも嫉妬を抱き、女との対話では声を荒げ、感情を乱す場面もあった。夢の中にだけ存在する女にのめり込んでいく親友への思いを爆発させるシーンには、感情を揺さぶられた。
ピアニストを演じた有澤は、感情の揺れ動きを丁寧に表現していたのが印象的だった。衰弱しきった現実の自分と、夢の中の女と話している時の無邪気な自分。そのギャップを、人間としてのリアリティを持って生き生きと演じていた。特に桜井玲香との会話シーンでは苦しい現実から逃れ、次第に恋にも似た感情が芽生えていくことが声色の変化からも伝わってくる。多くの舞台やミュージカルを経験していることもあって、声だけではなく役者自身の表情の変化も見どころとなっていた。
夢の中に登場する女を演じた桜井は、キュートでいて凛々しくもある演技で魅了。女は、夢の中にだけいる儚い存在だ。そんな女を桜井は感情豊かに表現し、話が進んでいくと次第に人間らしい一面も見えてくる。有澤への少しいたずらっぽい笑み、そしてわがままで愛らしい言葉でピアニストを翻弄していく。有澤と桜井のデュエットでは、桜井の伸びやかな歌声に有澤の優しい歌声が重なり、絶妙なハーモニーが生まれていた。
そんな3人の演技を壮大な音楽で豊かに彩っていたのが、作曲・音楽監督でもあり、チェリストの村中俊之と、ピアニストの白井アキトが奏でる音楽だ。3人の怒り、悲しみ、嫉妬といった感情の変化に呼応するように奏でられる音楽によって、観客は作品の物語に没入することができる。これこそが音楽朗読劇の醍醐味なのだと改めて感じさせられた。
なお、生配信された千穐楽公演については、10月23日(水)までアーカイブ映像が配信されている。言葉だけでは感じられないリアルな感動体験を味わってみてほしい。
取材・文=川崎龍也
権利表記=(C)READING HIGH
配信情報
音楽朗読劇READING HIGH noir 第1回公演『HYPNAGOGIA~ヒプナゴギア~』
販売期間:~2024年10月23日(水)21:00
アーカイブ視聴期間:~10月23日(水)23:59まで
配信:¥4,300(税込)
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