歴史上で復讐をテーマにした映画は数多い。
キアヌ・リーブスが圧巻のアクションを見せる『ジョン・ウィック』シリーズは言うまでもなく名作であるし、『メメント』のようなサスペンス要素の強い作品も後世に語り継がれている。
そんな中、少し異なる毛色の"復讐映画"が、2022年に公開された『MEMORY メモリー』。『007 ゴールデンアイ』や『007 カジノ・ロワイヤル』などを手掛けたマーティン・キャンベル監督がメガホンを握っているだけに、華麗なガンアクションが大きな魅力のひとつとなっている。正確には何かの恨みを晴らす類の作品ではないが、主人公が悪人たちへの裁きを求めるという点では、リベンジというジャンルに含めてもいいかもしれない。
同作品では、完璧な殺し屋として、裏社会でその名を馳せてきたアレックス・ルイス(リーアム・ニーソン)が、アルツハイマー型認知症により引退を決意したところからスタートする。最後と決めた仕事を引き受けるが、ターゲットが少女だと知り怒りに震え契約を破棄する。「子供だけは守る」という唯一の信念を貫くため、独自の捜査を開始し、黒幕である人身売買を行う巨大組織との対決に向かうのだった。
主演を任されたのは70歳を超えるリーアム・ニーソン。『96時間』などでアクションスターとして名を馳せた後、今作品ではアルツハイマーで記憶を失っていく殺し屋を演じた。すでに老人と言って差し支えない風体となっているが、これまでの俳優キャリアで見せてきたように銃を扱う所作や殺し屋としての仕事ぶりはクールで、その渋い声もあいまって年齢を感じさせない色気を放つ。同時に、自身が悪とみなした人間は容赦なく鉄槌を下し、その冷たい瞳からは畏怖の念さえ覚えてしまう。
一方で、目の奥にはアレックスが抱える病気への不安も見て取れた。記憶が失われていき、さらに病状も進行。信念とは異なる、何の罪もない警察を撃ち殺してしまったり、意識が混濁している様子ものぞかせるなど、本来持っていた能力も影を潜める。次々と仕事をこなしながら、どこか心配になってしまうのは、彼の表情がもう長くはないという病状を物語っているからだろう。
また、ストーリーの構成としてはアレックスが悪に迫っていくというものだが、登場人物が多いこともあって複雑だ。様々な障壁が立ちはだかるだけに、いくら凄腕の殺し屋とはいえ病魔に侵されるアレックスが最後まで目的を完遂することができてしまえば、若干の違和感を持っていただろう。しかし、『MEMORY メモリー』はある意味でリアルなクライマックスを用意している。アレックスは途中で警察に捕まり、一度は抜け出すも、最終的には銃弾に倒れるのだった。
アレックスが物語から退場し、復讐はどのような結末を迎えるのかというと、それは最後まで見て確認してほしいのだが、悪は裁かれるという点ではスカッとできるラストとなっているのではないだろうか。
一点注文をつけるとするなら、アルツハイマー型認知症が物語の本筋に大きく関わってはいないという点。アレックスの記憶が途切れ途切れとなっていることはあくまでも全体のスパイスに過ぎず、大きな伏線となっていると期待していると、少し肩透かしを食らってしまうかもしれない。
それでも、リーアム・ニーソンのかっこよさを味わい、老いには抗えないという人間のリアルを体感できる映画という意味では最適。『MEMORY メモリー』でしか味わえないスリルや臨場感がきっとあるはずだ。
文=まっつ
放送情報【スカパー!】
『MEMORY メモリー』
放送日時:12月21日(土) 21:00~ほか
チャンネル:ザ・シネマ
※放送スケジュールは変更になる可能性がございます
(C) 2021, BBP Memory, LLC. All rights reserved.
詳しくはこちら