今年8月に「Chime」、9月に「Cloud クラウド」と監督を務めた作品が相次いで公開されている黒沢清監督。サイコ・サスペンスの傑作「CURE」(1997年)で世界的に注目され、近年では「岸辺の旅」(2015年)で第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の監督賞、「スパイの妻 劇場版」(2020年)で第77回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞を受賞するなど、日本だけでなく海外でも高く評価されてきた。
そんな世界的巨匠・黒沢監督がフランス・日本・ベルギー・ルクセンブルクの合作映画として制作した作品が「蛇の道(2024)」。12月8日(日)にWOWOWシネマで放送される本作は、1998年に劇場公開された自作を、フランスを舞台にセルフリメイクしたリベンジ・サスペンスだ。
8歳の娘マリーを何者かに誘拐された末に惨殺されたジャーナリストのアルベール・バシュレ。愛娘の死にショックを受け精神を病んだ彼は、通院先の病院で心療内科医として働く新島小夜子に出会う。彼女の協力を得ながら犯人探しに没頭し、アルベールは復讐心を募らせていく。そして、2人は事件に絡む元財団の関係者たちを郊外の廃墟と化した隠れ家に次々と連れ去り、監禁。彼らの口から重要な情報を手に入れるが、やがて思いもよらぬ衝撃の真実が浮かび上がってくる。
一番の見どころは、黒沢監督からの熱いオファーに応えて出演した柴咲コウだろう。哀川翔が主人公を演じたオリジナル版から国も性別も変更したリメイク版で、パリで暮らす心療内科医の女性・小夜子を演じた。
これまで「ガリレオ」「Dr.コトー診療所」などの人気シリーズや主演を務めたNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」など、直情的で正義感や気が強い役柄が多かった柴咲。今作で演じるのはそんなイメージとは異なる、もの静かで謎多き女性。撮影の半年前からフランス語のレッスンに臨み、現地で実際に2ヶ月間生活するという役づくりを行ない、他人の復讐に協力するヒロインを怪演している。
小夜子はアルベールの誘拐や監禁を徹底的にサポート。その行動の理由や目的ははっきりしないまま容赦なく男たちを痛めつける。囁くような甘い言葉に、男たちは惑わされ背中を押されていく。感情の読めない表情と淡々とした口調に恐怖や緊張が生まれるが、美しくも妖しいヒロインの真意は見えない。それでもその冷たい瞳の奥に何か強い意志を秘めている。違和感を抱かせないフランス語も抑えた演技も、俳優としての確かな力量があってこそ。若かりし頃から変わらぬ美貌も、小夜子のミステリアスさや恐ろしさをより引き立たせている。
共演陣にも実力派が揃った。「レ・ミゼラブル」(2019年)で知られる俳優ダミアン・ボナールが復讐に燃えるアルベールを演じ、フランスの名優マチュー・アマルリックも拉致される財団の幹部役で出演。小夜子の患者・吉村を演じた西島秀俊も物語の中で確かな存在感を見せた。
放送情報【スカパー!】
蛇の道(2024)
放送日時:2024年12月8日(日)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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