未曾有の被害をもたらした阪神・淡路大震災から、1月17日で30年目を迎える。震災の記憶と教訓は今も忘れずに活かされてきたが、節目となる来年1月に「震災から30年 神戸の記憶」と題して神戸を舞台とした映画がWOWOWシネマで特集される。
その中の一本が1月14日(火)にWOWOWシネマで放送される「べっぴんの町」(1989年)。本作は、少年院法務教官という異色の経験を持ち、映画「サード」(1978年)の原作者としても知られる作家・軒上泊の同名小説を原作とするハードボイルドなアクション・エンターテインメントだ。
数年前まで少年院の教官を務め、現在は神戸のダウンタウンに住む"私"は、アマチュア探偵として日々を過ごしている。ある日、田村亜紀子という女と洋上デートと洒落込むが、彼女の店の上客である宝石商の娘・町子を捜してほしいと頼まれる。
すこぶる別嬪なクライアントに惹かれて"私"は捜索を開始。少年院時代の教え子で若きエリートヤクザ・左山から、とある屋敷に若い娘たちが拉致監禁されているとの情報を得る。言いしれぬ怒りと苦い予感を抑えて現場に乗り込んだ"私"は、もう一人の少女・令子と知り合う、というストーリーが展開。異国ムードに漂う港町・神戸を舞台に重厚な人間ドラマを繰り広げられる。
主演を務める柴田恭兵は、本作の少し前となる1986年から始まった「あぶない刑事」シリーズの"ユージ"役で大ブレイク。2024年5月には8年ぶりとなる新作映画も公開するなど現在も根強い支持を受け続けているシリーズだが、それまでの常識を覆すスタイリッシュかつコミカルな刑事ドラマ"あぶ刑事"は当時の若者を中心に爆発的な人気を得ていた。
そんな人気真っ只中に同じく東映で製作されたのが「べっぴんの町」だ。"あぶ刑事"シリーズの演出を手掛けた原隆仁が監督を務め、柴田は主題歌も担当した。柴田が演じるのは、ユージとは違い、元少年院教官のアマチュア探偵で、失踪した少女の行方を捜して神戸の町を奔走するが、横浜しかり神戸しかり、柴田には港町がよく似合う。
オープンカーに颯爽と飛び乗り、カーチェイスに激しい格闘シーンと華麗なアクションも披露。白いコートにサングラス、煙草を吸う姿や髪をかきあげる仕草、眉の上げ下げさえも洗練された大人の男のセクシーな魅力に溢れている。40歳手前にしてこの貫禄、粋なセリフも佇まいも渋く、とにかく格好良い。クールに見えて熱い男の切なさも哀愁も雰囲気たっぷりに魅せた。
今なお変わらぬ格好良さで活躍する柴田。本作では、謎の美女・亜紀子役の田中美佐子、若きヤクザ・左山役で本木雅弘とも共演しており、デビュー間もない和久井映見など若々しいキャストたちのフレッシュさにも注目したい。そして、震災前の神戸の姿も大きな見どころの一つ。柴田演じる"私"が奔走する、美しい港町・神戸が懐かしく優しく映し出されている。
文=中川菜都美
放送情報【スカパー!】
べっぴんの町
放送日時:2025年1月14日(火)19:15~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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