また、雅楽家としても高名な貴族・源博雅を染谷将太が好演。素直な反応と裏表のない言葉で、どこか愛らしく憎めない男で、自分は晴明に文句を言うわりに、他人からの悪口は聞き捨てならず本気で反論してしまう。悪態をつきながらも遠慮のないやりとりを交わし、唯一無二のバディのような存在になっていく。

晴明と博雅がそれぞれに持つ強さと弱さ、互いの欠点を補いながら困難を乗り越えて少しずつ信頼関係を築いていく様を、山崎と染谷が丁寧に演じている。正反対に見えて実はよく似ている2人の関係性、熱い友情も見どころの一つだ。

さらに、本作のヒロイン・徽子女王を奈緒が美しく愛らしく演じている。博雅を幼い頃から慕う乙女の表情に、花のような笑顔に惹き込まれる。激情や切なさも繊細に表現した。覚悟を決めた真っ直ぐな瞳が印象的だ。

事実のみを見ようとする晴明の強さと美しさを体現した山崎。「アンフェア」シリーズで知られる監督・佐藤嗣麻子が大切にしている原作の世界観の中で躍動し、染谷らと共に新しい陰陽師を作り上げた。

文＝中川菜都美