お笑い芸人として活躍しながらエッセイや小説など多彩な執筆活動も行なっているピース・又吉直樹。中編デビュー作で第153回芥川賞を受賞した「火花」や、恋愛純文学として異例のベストセラーとなった「劇場」など、作家としても高く評価されてきた。

また、又吉は椅子を偏愛しており、様々な角度から椅子を切り取る企画を立案・編集した雑誌「又吉直樹マガジン　椅子」で編集長も務めたことも。そんな無類の椅子好きであることから生まれたドラマ「椅子」(2022年)が、2月25日(火)にＷＯＷＯＷプライムで一挙放送される。

本作は、又吉が書き下ろしたストーリーをドラマ化したオムニバス。椅子と女性の人生を重ねて描き、1話につき1脚の実在する椅子が登場する。ヴィンテージやオリジナルモデルなどインテリア好きにはたまらないラインナップだが、すべて又吉によるセレクト。ドラマ内では怪しげな椅子店の店主を演じており、椅子の魅力を紹介している。

その椅子の成り立ちはもちろん特性や造形美なども織り込みながら、バリエーションに富んだユニークで摩訶不思議な8つのストーリーに仕上げた。各話の主演を、吉岡里帆、モトーラ世理奈、石橋菜津美、黒木華が2話ずつ担当し、異なる主人公を演じている。

第1話の主演を務めた吉岡は、引っ越ししたてで電球を一人で交換できないOLの菜奈を演じた。通りがかりで声をかけてくれた男・進(岩崎う大)に椅子（No.14）を借りるが、2人はそれぞれ人に言えない秘密を抱えていた...というストーリーが展開する。

続く第2話で吉岡は元ピアノ教師の母と2人暮らしをしている森川良美と、同じ名前の読み方をする幼馴染・佐伯佳美の2役を演じている。久しぶりに佳美に呼び出された良美は、かつてピアノ教室に通っていた時に聞かされたという意外な話を語り始める。自然体の会話でどこか歪な主人公を吉岡が表現。誰にも見せない秘密をそっと覗いてしまっているような、不思議な世界観に引き込む。

また、第7話と第8話で主演を務めた黒木も、これまでとは異なる魅力を放つ。第7話では、赤い服に身を包んだ謎の美女・楓を演じ、バーの雇われ店長(ムロツヨシ)を翻弄する。独特の雰囲気と色香を纏い、ミステリアスな言動を繰り返す楓。まるで一つの舞台のような、夢か現か分からなくなる不思議な空間を作り出す。

そして、第8話では人気YouTuberの妹と同居するフリーター・梢を演じた黒木。奔放に振る舞う妹に耐えかねて家を出るが、自分が買った椅子(アリンコチェア)だけは取り戻そうと奮闘する様を熱演。テンポの良いリアルな会話劇、振れ幅の大きい演技にも注目だ。