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小泉孝太郎演じる刑事が警察内部の巨悪に挑む「小杉健治サスペンス 保身」

俳優

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推理作家の小杉健治は、元プログラマーという異色の経歴を持ち、弁護士や検事が主人公の法廷ものや時代小説でも数多くの傑作を残している。「絆」(1996年・日本テレビ系他)や「決断」(2015年・テレビ東京系)、「当番弁護士 梶原藤子の事件ファイル」(2020年・テレビ東京系)など、ドラマ化された作品も多い。「小杉健治サスペンス 保身」もその一つで、2015年にテレビ東京系で放送された。

本作は小泉孝太郎と泉ピン子の競演で、警察上層部を巻き込む巨大な権力に挑む緊迫のドラマを描いている。警視庁捜査一課の刑事・宮下文也(小泉孝太郎)の上司である藤浦静香(泉ピン子)が定年を迎え、送別会が行われる。主役の静香より管理官の蓮見大吾(木下ほうか)がもてはやされる中、蓮見は所用で途中退席。後日、団地で絞殺体が発見される。送別会と同日の犯行だと判明。さらに同日に、団地の近くでひき逃げ事件が発生し、男性が死亡していた。警察は絞殺事件の容疑者として金谷次郎(伊東孝明)を拘束するが金谷は否認。そして取り調べ中の宮下がなぜか捜査から外される。その夜、県警本部長の部屋ではある密談が交わされていた...。

物語は、その後金谷の送検を疑問視する新聞記者の羽村真琴(片瀬那奈)が藤浦静香に相談し、上の方針に納得がいかず、再び現場を訪れた宮下が静香に遭遇。静香は宮下に、金谷がひき逃げ事件の現場を目撃した可能性があると語る。やがて絞殺とひき逃げの2つの事件は、警察組織を揺るがす衝撃的な展開を見せ始める。

小泉演じる宮下は、職場でも家庭でも面倒事に巻き込まれないよう生きてきた"ことなかれ主義"の男だ。娘の千夏(永野芽郁)が不登校状態にあるが、家族の問題から逃げるように仕事にかまけ、対応は妻の圭子(紺野まひる)に任せきり。はっきり言ってカッコいい主人公とは言えないのだが、それでも静香と事件を追ううちに巨悪の存在に突き当たって、正義を貫いていく姿が胸を打つ。小泉の独特な持ち味がうまく発揮された役どころで、うまくはまっているという印象。泉ピン子もベテランらしい味わいがあり、一匹狼的な静香を好演。不祥事の名誉挽回に燃える管理官・坂江川を演じる相島一之、県警本部長の村瀬孝雄役の中村橋之助、鑑識課の須崎貴史役の水橋研二、東深津署のベテラン刑事・下川正春役のエド山口といった共演陣も持ち味を発揮して存在感がある。威厳十分の管理官・蓮見を演じる木下は彼のもっとも得意とする役どころで、まさにはまり役だ。また、当時15歳でブレイク前の永野芽郁も好演。子役時代から芸歴を重ねていただけに、本作でも確かな表現力を感じさせてくれる演技を披露している。永野は本作の同年に公開された映画「俺物語!!」でオーディションを勝ち抜きヒロイン役に抜擢されて脚光を浴び、翌年にはテレビ東京系ドラマ「こえ恋」で初主演を果たすなど人気がブレイクしていった。
 
小杉健治原作のドラマは、緻密で骨太なストーリー展開に加えて、キャラクターの味わい深さも特徴だ。小泉演じる宮下文也を単純な正義のヒーローにしていないところが面白いし、泉が演じる藤浦静香にしても定年を迎えて第二の人生を送ろうとしていたところに、捜査に巻き込まれるという設定で一ひねりしている。

正義に突き動かされる形で、主人公が巨大権力に挑むストーリーを軸にしながら、無関係に思われた女性絞殺事件とひき逃げ事件が結びつき、警察上層部がひた隠しにする重大な過ちに迫っていく。「空白の4時間」の謎という事件解明の鍵となる重要なシークエンスもあり、最後まで目が離せない秀作が「小杉健治サスペンス 保身」だ。単発作品なので、どうしても話題に上る機会が多くないのだが、小泉孝太郎のはまり役のひとつとしても、もっと世間に評価されていい作品と言っていいだろう。

文=渡辺敏樹

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放送情報【スカパー!】

小杉健治サスペンス 保身
放送日時:2025年3月29日(土)12:00~ほか
チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

詳しくは
こちら

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