2024年は立て続けに映画やドラマに出演し、飛ぶ鳥を落とす勢いだった奈緒。木梨憲武との親子役が話題となったドラマ「春になったら」にはじまり、皇族の姫を演じた映画「陰陽師0」、物語の鍵を握るヒロインとして存在感を示した「告白 コンフェッション」や「傲慢と善良」、さらにドラマ「あのクズを殴ってやりたいんだ」など、幅の広い演技で役者としての実力をアピールした。

そんな奈緒が主演を果たし、繊細な演技力を発揮したのが、4月12日(土)にＷＯＷＯＷシネマで放送される映画「先生の白い嘘」だ。性暴力、性の不条理を容赦なく描き、話題を集めた鳥飼茜の同名漫画を原作とした本作。親友の交際相手からの暴力に耐え続ける高校教師の女性が暴力から抜け出そうとする姿を描くヒューマンドラマとなっている。

高校教師の美鈴(奈緒)は生徒たちを見下すことでひそかに自尊心を満たす日々を送る一方、男女間の不平等さから目を背けながら過ごしてきた。そんなある日、美鈴は親友の美奈子(三吉彩花)から、恋人の早藤(風間俊介)と婚約したことを告げられるが、この早藤こそかつて美鈴に女性であることの不平等意識を植え付けた張本人だった。

早藤のことを忌み嫌いながらも、彼の呼び出しに応じ続けてしまう美鈴だったが、男子生徒の新妻(猪狩蒼弥)から衝撃的な性の悩みを打ち明けられたことを機に、目をつむり続けてきた自分の中の醜い感情と向き合っていく。

奈緒が演じる美鈴は、平静を装いながら高校教師として働いているが、胸中では生徒たちを教卓から見下ろし観察することでプライドを保っている。男女の不平等さの絶望を叩きつけてくる早藤を軽蔑しながらも、強いられた関係を通して性への渇望が目覚めたことに気づいてしまい、矛盾した感情に引き裂かれそうになる...そんな複雑な感情を持つ人物だ。

「女だから仕方ない」と思い込んできた女性のやりきれない感情を奈緒は繊細に表現しており、教壇に立つ空虚な目つきや、美奈子と早藤から婚約を告げられた時の影を落とした表情など、冒頭の顔つきだけで、美鈴がどれだけ抱え込みながら生きてきたのか、その背景が痛々しいほど伝わってくる。

また、目を背けたくなるような性暴力シーンなど、この世界にいる声を上げられない人たちの思いも背負いながら作品に挑んだ奈緒。「作品と共に苦しみ、作品と共に闘うことを心に誓い、出演をお受けした」と語っているように、並々ならぬ覚悟を持って演じ切った彼女の凄みは、画面越しでも受け取れるだろう。

そんな奈緒と共に印象的なのが、HiHi Jetsのメンバーである猪狩蒼弥。人妻に迫られたことをきっかけに、性に対してトラウマ抱くようになった少年の感情を掬いとる、丁寧な演技で存在感を発揮している。