話題作を連発する白石和彌監督が香取慎吾とタッグを組んだ重厚な人間ドラマ「凪待ち」

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史上3人目となる2年連続ブリ―リボン賞監督賞受賞者である白石和彌監督。2024年には「極悪女王」(Netflix)を大ヒットさせて話題を呼んだ。精力的な活動ぶりで知られ、毎年意欲作を続々と世に送り出している。

特にアウトローの世界を描く作風を得意とし、2013年には実際に起きた凶悪殺人事件を題材とした映画「凶悪」で数々の映画賞を受賞。2017年には「彼女がその名を知らない鳥たち」、2018年は「孤狼の血」によって高い評価を受けている。そんな白石監督が、2019年に香取慎吾を主演に迎えてタッグを組んだ映画が、「凪待ち」だ。香取との仕事を待望していたという白石監督が新しい「香取慎吾を描きたい」と構想。脚本は白石監督作の「火花」(Netflix)でも組み、「クライマーズ・ハイ」や「ふしぎな岬の物語」で知られるベテランの加藤正人が担当した。

■恋人を死なせてしまった男が転落していく物語

負のオーラを表現する香取慎吾
負のオーラを表現する香取慎吾

(C)2018「凪待ち」フィルムパートナーズ

本作は「喪失と再生」をテーマにした重厚な人間ドラマ。香取が演じるのは、パートナーの女性・亜弓(西田尚美)とその娘・美波(恒松祐里)と共に彼女の故郷、石巻市で再出発しようとする男・木野本郁男。ギャンブル好きで無為な毎日を送っていた郁男だったが、石巻で真面目に働こうとしていた。亜弓の父で漁師の勝美(吉澤健)は、末期がんに冒されながらも漁に出ており、近所に住む小野寺(リリー・フランキー)が世話を焼いていた。ある日郁男は、スナックで泥酔している中学教師・村上(音尾琢真)と出会う。彼は亜弓の元夫で、美波の父親だった。ある日、美波は亜弓とケンカして家を飛び出す。夜になっても帰らない美波を心配してパニックに陥り、口論となった郁男は怒りのあまり彼女を車から降ろしてしまった。その夜遅く、亜弓は無惨な遺体となって発見される。激しい悔恨の念に悩む郁男の人生は、転落の道を辿っていくのだった...。

小さな綻びが積み重なり、取り返しのつかない事態が起こってしまった郁男の転落ぶりがあまりにも痛々しく、観ていて辛くなる。何しろ郁男を演じる香取の迫真の演技がすごい。その暗い眼差しと、力のない空虚なセリフ回し。全身から漂う負のオーラは凄まじい。ヤクザが営む競輪のノミ屋に入り浸っては、むなしく大金を溶かして借金を重ねる。

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放送情報【スカパー!】

凪待ち
放送日時:2025年6月15日(日)00:00~
放送チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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