映画『宝島』俳優・窪田正孝が表現する"想い"に、私たちはこれまでもこれからも夢中になる
俳優

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会
妻夫木聡が主演を務める映画『宝島』が、9月19日(金)に全国公開される。
真藤順丈による傑作小説を実写化した本作は、「沖縄がアメリカだった時代」を懸命に生き抜いた若者たちの人生を描く。一足早く、試写で作品を拝見したが、アメリカ統治下だった沖縄、空白の20年、米軍基地から奪った物資を住民らに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれた若者たちの姿が、今でも目に焼きついて離れない...。
なかでも、窪田正孝という俳優の"凄み"を感じる瞬間が多々あった。
今回、窪田が演じたのは、幼なじみのグスク(妻夫木)、ヤマコ(広瀬すず)らが慕う英雄的存在・オン(永山瑛太)の弟であるレイ。戦果アギヤーの仲間と共に、すべてを懸けて臨んだ襲撃の夜、オンが消息を絶ってしまう。ヤクザになったレイは、刑事になったグスク、教師を目指すヤマコとは距離を置きながら、独自にオンの影を追う。
偉大な兄を持つレイは、グスクやヤマコとは違う棘のあるオーラを纏っていて、どこか近寄りがたい存在だ。暴れまわるシーンや、咆哮するシーン、目を覆いたくなるような残虐なシーンなど、派手で印象に残る場面はたくさんあるが、どこか寂しそうな表情が印象的だった。"想い"を言葉ではなく暴力で表現してしまう彼だけど、葛藤して、思い悩んで、壁にぶつかっていた。そんなレイを窪田が見事なまでに表現していたのだ。

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会
思えば、窪田はいつも人間の"想い"を演技で見せてくれる俳優だった。「アンナチュラル」(TBS系/2018年)で、UDIラボの新人記録員・久部六郎を演じた際には、父・俊哉(伊武雅刀)にある本心を打ち明けるシーンがあった。父親に怯えつつも、決心して気持ちを伝えたあの目と、そのあとの三澄ミコト(石原さとみ)たちとのやりとりをいまだに覚えている、という人も多いのではないだろうか。
この他にも、天才放射線技師の主人公・五十嵐唯織を演じた「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」(フジテレビ系/2019年)では、一途に幼なじみのことを想い続ける役どころを、同じく主演を務めたNHK朝の連続テレビ小説「エール」(2020年)では、どこまでも音楽を信じて突き進む古山裕一を演じたが、どんな役になっても、そのキャラクターの"想い"が伝わってきて、感情のすべてを持っていかれてしまう。窪田が演じる役に夢中になってしまうのだーー。
映画『宝島』でもそうだ。窪田が表現したレイの"想い"を受け止めて、苦しくて、苦しくて、仕方がなかった。「そうするしかなかった?そうせざるを得なかった?」...。作品に込められた想いも含め、さまざまな感情が去来した。

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会
役の感情を観る人に伝え、作品の世界観にダイブさせてしまう俳優・窪田正孝。もちろん他のキャストにも言えることではあるが、試写だけでは足りない。映画『宝島』公開後は、何度も劇場に足を運んで、レイを演じる窪田の演技を堪能したいと思う。
文=浜瀬将樹
公開情報
映画『宝島』
出演:妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太
塚本晋也、中村蒼、瀧内公美、栄莉弥、尚玄、ピエール瀧、木幡竜、奥野瑛太、村田秀亮、デリック・ドーバー
監督:大友啓史
原作:真藤順丈『宝島』(講談社文庫)
公開表記:2025年9月19日(金)より全国公開
配給:東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会
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