深津絵里を語るうえで欠かせない佳作!内野聖陽と共演したキャリア初期のラブストーリー「(ハル)」

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「(ハル)」 (C)光和インターナショナル
「(ハル)」 (C)光和インターナショナル

「THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE」(9月26日(金)公開)で「サバイバルファミリー」(2017年)以来、実に8年ぶりとなるスクリーンへのカムバックが話題を集めている深津絵里。連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(2021年)での演技も記憶に新しいが、相変わらずの透明感溢れる姿でファンを喜ばせている。

そんな深津のキャリアを語る上で外すことができないのが、9月1日(月)にWOWOWシネマで放送される主演映画「(ハル)」(1996年)。故・森田芳光監督がインターネット黎明期にいち早く"パソコン通信"がつなぐ男女の交流を描いた意欲作だ。

東京で営業の仕事をしている速見(内野聖陽)は、"(ハル)"というハンドルネームで映画好きが集うフォーラムに参加し、"(ほし)"と名乗る相手(深津)と意気投合。個人的にメールを出し、互いの悩みを打ち明け合う良好な関係へと発展するが、(ほし)は自分が東京に住む男性ではなく盛岡在住の女性であることを告げる。そんな中、(ハル)は"(ローズ)"と名乗る女性(戸田菜穂)と実際にデートを重ねる仲になり...。

深津絵里が(ほし)こと藤間美津江をナチュラルに演じた映画「(ハル)」
深津絵里が(ほし)こと藤間美津江をナチュラルに演じた映画「(ハル)」

(C)光和インターナショナル

今から約30年前、顔や素性はおろか性別すら分からないインターネット上での交流を描く本作は、メールの文面がスクリーンに映し出されるという映像表現をいち早く取り入れるなど、昨今では当たり前となったコミュニケーションの目新しさを大胆に表現している。

しかし、パソコンそのものに関する描写がほとんどないように、あくまでパソコン通信は手段に過ぎず、作品が描くのは「手段は変わろうが人と人のつながりは変わらない」という普遍的なメッセージだ。決して古さを感じさせないどころか、ネットでの交流が身近な今だからこそ、むしろ共感できる点も多い。

性別すら分からないところから徐々に惹かれあっていく(ハル)と(ほし)をはじめとするユニークな人間模様を演じた俳優陣も豪華で、現在のビッグネームたちの若かりし姿を拝むことができる。深津が演じる(ほし)こと藤間美津江は、かつての恋人を失った経験から恋愛を拒み続けてきた女性。ストーカー化する知人に悩まされるなか、(ハル)との文章でのやり取りを通じて少しずつ前へ歩み始める。

盛岡で慎ましい生活を送る女性の物寂しさや少しずつ積み重ねてきた関係にふと抱く虚しさなど、深津は独特の憂いを帯びた雰囲気を活かし好演。また、鮮烈な赤いワンピースを纏った姿など、ネットの出会いがもたらす相手への想像が膨らんでいく高揚感を、抜群の透明感でナチュラルに表現している。

その相手となる(ハル)こと速見昇を演じる内野は、現在の"イケおじ"な姿からは想像がつかないような青臭い姿が印象的。ケガでアメフトの選手生活を断念し、彼女との別れで自分を見失いかけ、さらに仕事もパッとしない等身大なサラリーマンを演じ、どことなく爽やかに、時には軟派に見えたりと型にハマらない男性像を見事に体現している。

そのほかにも、あるショッキングな事実が明らかになる積極的な女性(ローズ)を演じた戸田、主題歌を担当したTHE BOOMの宮沢和史を役者として起用するなど、森田監督らしい大胆なキャスティングも光る映画「(ハル)」。インターネットの黎明期という一時代を切り取りながらも今もなお語り継がれる名作を、俳優陣の名演と共にこの機会に堪能したい。

文=HOMINIS編集部

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放送情報【スカパー!】

(ハル)
放送日時:2025年9月1日(月)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

詳しくは
こちら

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