原作/とんたにたかし・鈴木マサカズ「ダンダリン一〇一」(講談社『モーニングKC』所載)(C)NTV
労働省の機関のひとつ労働基準監督署、通称・労基。働く人を守るため、企業の違反や不正に目を光らせる監督官を描いたドラマシリーズが「ダンダリン 労働基準監督官」である。
本作が放映されたのは、ブラック企業やワーキングプア、過労死ラインといったワードが定着し社会問題として注目されはじめた2013年のこと。弱い立場の労働者を守るため、竹内結子演じる破天荒な新任監督官・段田凛がブラック企業の経営者に挑むお仕事エンタテインメントドラマだ。そんな本作で、段田に振り回される相棒役の指導係・南三条和也を演じたのが松坂桃李である。
いまや日本を代表する演技派の松坂は、2009年に主演作「侍戦隊シンケンジャー」で俳優デビュー。映画「アントキノイノチ」(2011年)で第85回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞を受賞した。続く「ツナグ」(2012年)や「麒麟の翼〜劇場版・新参者〜」(2012年)などでも日本アカデミー賞新人俳優賞ほか多くの賞を受賞。NHKの朝ドラ「梅ちゃん先生」(2012年)ではヒロインの相手役に抜擢されその名を広く知らしめた。着実にキャリアを重ねる松坂が、実力派・竹内の相手役を務めたのが本作である。
■松坂桃李は竹内結子演じる主人公・段田凛の指導係を熱演
原作/とんたにたかし・鈴木マサカズ「ダンダリン一〇一」(講談社『モーニングKC』所載)(C)NTV
松坂演じる南三条は、予定や規則から外れることを嫌う典型的な事なかれ主義の公務員。毎朝決まった時間に登庁し同じ時間に退庁する、判で押したような日々を送っていた。
そんな彼の前に現れた段田は、不正や違反を目にしたらどんな些細なことでもその場で注意・是正しなければ気が済まない性格。お約束や慣例を気にも留めない大胆不敵な行動で職場に嵐を巻き起こす、エキセントリックな役人だ。そんな段田の指導係を命じられた南三条が、予測不能な彼女に振り回される中、労基にとって本当に大切なものを学んでいくのが本作の骨子である。
松坂の持ち味は、シリアスからコメディ、狂気をまとったバイオレンス系までどんな役にもなりきる柔軟性と透明感。「娼年」や「流浪の月」などでの肉体改造を含め、徹底した役作りで高く評価されている。当時デビュー4年目だった松坂は、全11話を通して少しずつ使命感に目覚めていく南三条を熱演。態度や物言いが段田に似ていく様を同僚から"段田化"と揶揄されながら、時に上司に逆らいながら弱者のために仕事に打ち込む青年を、ユーモアを交えて演じている。
痛快さだけではない。第7~8話では、段田の影響で行った大胆な行動がやがて大きなトラブルに発展。段田に不満をぶつける中で、とつぜん涙を流して心を閉ざすナイーブな感情表現に、後の技巧派の片鱗を覗かせた。
■クセのある他キャラとも馴染む松坂の柔軟性たっぷりな演技は必見
原作/とんたにたかし・鈴木マサカズ「ダンダリン一〇一」(講談社『モーニングKC』所載)(C)NTV
振り幅の大きい南三条は本作でもっとも共感を呼ぶ存在。起伏の激しい段田を演じた竹内とのコンビネーションのほか、短気な上司を演じた北村一輝、マイペースな母役の石野真子らクセの強いキャラとの掛け合いも柔軟に演じきっている。労働環境が厳しさを増している昨今、もっとも求められるのが段田・南三条のコンビのような存在。若き日の松坂の活躍はもちろん、時代性という意味でも本作はいま見るべきドラマといえるのだ。
文=神武団四郎
放送情報【スカパー!】
ダンダリン 労働基準監督官
放送日時:2025年11月15日(土)11:45~
放送チャンネル:ファミリー劇場
出演:竹内結子、松坂桃李、風間俊介、石野真子、大倉孝二、佐野史郎、北村一輝
※放送スケジュールは変更になる場合があります。
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