近年タカラヅカでもライブ形式のステージが増えたが、その新境地を開いたともいえるのが、タカラヅカ史上屈指の「踊れるトップスター」であった柚希礼音ではないだろうか。そんな彼女が2014年に行ったスーパー・リサイタル『REON in BUDOKAN~LEGEND~』の千秋楽の模様が3月30日(土)にTAKARAZUKA SKY STAGEで放送される。大好評を博した柚希礼音スペシャル・ライブ『REON!!』(2012年)、『REON!!Ⅱ』(2013年)に続く、集大成の場として選ばれたのは東京・日本武道館。タカラジェンヌが日本武道館のステージに立つのは、1998年の真矢みき以来16年ぶりのことだった。
このリサイタルが開催された2014年は、宝塚歌劇創立100周年。この時、柚希は翌年の退団を発表していた。メモリアルイヤーの締めくくりにも、トップスターとしてのキャリアの締めくくりにもふさわしいリサイタルだ。出演は星組の精鋭14人。柚希が登場した瞬間、8500人のファンで埋め尽くされた客席が沸いた。劇場では聞くことができない「うわぁー!」という大歓声だ。相手役・夢咲ねねの金髪ストレートロングをはじめ、全員がそれぞれ個性的な髪形で目を楽しませてくれる。
トータルプロデュースと振り付けを担当したのはTRFのSAM。背景の映像に映る柚希と本物の柚希が対決したり一緒に踊ったり、日本武道館ならではのスケールを感じさせる演出も見どころだ。1階のアリーナに設けられたトロッコで柚希がスタンド席に近づくと、客席も大盛り上がり。さらに柚希が2階席にまで登場する一幕も。そのサービス精神に2階席のファンも感動の渦に包まれた。
体育会系の柚希らしさが表れたのが、客席参加のダンスと歌のコーナーだ。ダンスはミュージカル『ロミオとジュリエット』のフィナーレで柚希自身も踊った振りを一緒に踊り、歌はレビュー作品『シトラスの風』の名曲「明日へのエナジー」を3パートに分かれて会場全体でハモるというもの。どちらも決して簡単ではないが、事前にWebサイトなどで公開された「振付講座」と「コーラス講座」の映像で、ファンは予習完璧な様子。ステージと客席が高いレベルで一体化したひとときとなった。
途中にはコミカルな寸劇も。柚希がこれまで演じた役を振り返る趣向で、娘役を含めた全員が柚希の役に扮し、「愛と青春の旅だち」に登場する真風涼帆演じる鬼軍曹フォーリーのしごきを受けるというストーリーだ。1人だけ終始大真面目の真風が何ともおかしい。『REON!!』『REON!!Ⅱ』でおなじみとなった、柚希の少女時代のキャラクター「ちえちゃん」には同期の十輝いりすが扮し、背の高い十輝がおかっぱ頭にランドセルを背負った姿で客席を和ませる。
ラストは柚希自身が作詞に挑戦したオリジナル曲「For good」を披露。順風満帆にスター街道を歩んで来たように思える柚希の、意外な素顔が垣間見える一曲となっている。また、ファンがペンライトで作り出すレインボーカラーの幻想的な空間も美しい。タカラヅカを卒業した今もコンサート形式の舞台を続けている柚希だが、それもこの時の経験が糧になっているからだという。ファンにとっては、何度見ても感慨深さに浸れる珠玉のリサイタルだ。
文=中本千晶
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放送情報
柚希礼音スーパー・リサイタル『REON in BUDOKAN~LEGEND~』('14年星組・日本武道館・千秋楽)
放送日時:2019年3月30日(土)23:00~
チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※3月27日(水)~3月31日(日)は無料放送。
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
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