土屋太鳳の演技が作品世界に引き込む 映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』

写真左から土屋太鳳、佐藤健
写真左から土屋太鳳、佐藤健

朝ドラ「まれ」(NHK総合)でヒロインを務め、女優としての地位を不動のものにした土屋太鳳。以降さまざまなドラマ、映画で主演から助演までオールマイティにこなす一方、人気バラエティー番組では飾らない人柄で人気を博している。そんなマルチに活躍する土屋の底知れない女優としての実力が存分に楽しめる作品が2017年公開の映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』。チャンネルNECOにて8月10日(土)に放送される。

(C)2017映画「8年越しの花嫁」製作委員会

同作は、実在するカップルに訪れた奇跡の実話を描くラブストーリーで、土屋と佐藤健がW主演を務め、二人は同作で「第41回日本アカデミー賞」優秀主演男優賞、優秀主演女優賞を受賞している。土屋は、佐藤演じる尚志との結婚式を3カ月後に控え幸せの絶頂にいる中、突然原因不明の病に襲われ意識不明となってしまう麻衣を演じている。

作品冒頭、飲み会で出会い順調に愛を育んでいく尚志と麻衣は、"静"と"動"がうまく調和したようなお似合いのカップルで、佐藤が実直で言葉が少ないながら包み込むような優しさを持つ尚志を表現するのに対し、土屋は裏表がなく人見知りしない天真爛漫(てんしんらんまん)な麻衣を演じ、朝ドラのまれ役で見せた"土屋の代名詞"ともいえる明るいキャラクターの魅力を存分に引き出している。

(C)2017映画「8年越しの花嫁」製作委員会

一方で、病気が発症した途端に「原因が分からない不安感」「幻惑にとらわれた時の恐怖感」から我を忘れてしまう場面では、同じ人物が演じているとは思えないほどの変貌ぶりを披露。その強烈さゆえに、見る側は強引に心を揺さぶられ、これから始まるであろう悲劇の幕開けを予感させられる。

この"土屋の代名詞"とはかけ離れた芝居をパーフェクトに演じ切るパワフルな演技に、誰もが気付かぬうちに物語の中に引き込まれてしまうのだ。さらに、佐藤や麻衣の両親役の杉本哲太、薬師丸ひろ子の振り回されて混乱する"受け"の芝居も絶品で、土屋の熱演をより際立たせている。若手演技派俳優・女優とベテランの実力派俳優・女優が織り成す芝居の化学反応による"誘引力"には抗えない。

(C)2017映画「8年越しの花嫁」製作委員会

麻衣が病に倒れてからは、麻衣の奇跡の回復を願う尚志が健気に寄り添う姿を中心に描いており、一途な愛を貫く尚志役の佐藤の熱演に心が震える。麻衣を思い側に居続けようとするひたむきさは、まぎれもなく同作の魅力の一つだ。

その後、奇跡的に目を覚ました麻衣だったが、生まれ直したかのように脳がリセットされた状態で、尚志らは付きっきりで麻衣を看護。段階的によくなる麻衣だったが、尚志と過ごした時間を思い出すことができず尚志への愛情を抱けない。

(C)2017映画「8年越しの花嫁」製作委員会

この場面では、「思い出してあげたいけど思い出せない」「ずっと寄り添ってくれる尚志のためにもなんとか思い出したい」というすっきりしない麻衣の胸中を、土屋はほぼ表情だけで表現。「聞かされている過去の話は本当にあったのだろうか?」という不安がぬぐえない麻衣のひるみながら頑張る姿を繊細に表現しており、台詞が少ない中で十二分に伝わってくる感情表現の幅の広さに、役者としての実力の深みが感じられる。

物語は、思い出せずに苦しむ麻衣を見かねた尚志がある決断を下すところから、クライマックスへと向かっていく。

(C)2017映画「8年越しの花嫁」製作委員会

物語の展開は分かっていながらも涙をこらえることができないのは、役者たちの芝居によるものに他ならない。中でも、同じ役の中で八面六臂の働きを見せる土屋の演技に注目して、彼女の芝居の"誘引力"に導かれながら深く作品に没入してみてはいかがだろうか。日本アカデミー賞優秀主演女優賞は伊達じゃない。傍らにBOXティシュを用意して観ることをお薦めする。

文=原田健

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放送情報

8年越しの花嫁 奇跡の実話
放送日時:2019年8月10日(土)21:00~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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