主人公の"サンチー"が目を釣り上げて「GO!!」と叫ぶ場面でおなじみ。北川景子主演の連続ドラマ「家売るオンナ」、スペシャルドラマ「帰ってきた家売るオンナ」、「家売るオンナの逆襲」(すべて日本テレビ系)が日テレプラスで一挙放送される。不動産仲介会社を舞台に「私に売れない家はありません」と断言するスーパー営業ウーマン・三軒家万智(北川)の活躍を描くこのシリーズ。
万智はテーコー不動産のオフィスで、やる気がない後輩の白洲美加(イモトアヤコ)に有無を言わせず営業に送り出し、お人好しの庭野聖司(工藤阿須加)のことは「だから、庭野には家が売れない」とばっさり切る。美人だが喜怒哀楽を見せない鉄仮面で、愛想笑いもせず、お客にビシバシと決めつけ口調でアドバイスし、家を売っていく。脚本家の大石静らが生み出したこの痛快なヒロインは、北川の新たなハマり役となった。
そんなコミカルな職場ドラマであると同時に、1話ごとに不動産を売買したいと登場するゲストキャラクターたちが、2010年代の現在ならではの人間模様を見せてくれる。「家売るオンナ」第2話に登場した60代の夫婦は、一軒家を売りたくてテーコー不動産に相談するが、実は家の二階に引きこもっている息子(ビビる大木)のためにお金を残そうとしていた。将来に不安を抱えた一家に、万智は普通の営業マンが思いつかないようなアプローチをする。なんと、引きこもりの息子を働きに出そうとするのではなく、引きこもりは引きこもりのまま家賃収入で暮らせるような住み替えプランを提案するのだ。
その続編「家売るオンナの逆襲」では、泉ピン子扮する初老の独身女性・神子巴が登場する第2話が面白い。担当の庭野は多額の預金を持つ神子にマンションなどを売ろうとするが、気まぐれな神子はなかなか首を縦に振らない。実は彼女は孤独な境遇ゆえ「家を買っても死んだらひとり」だと気づき、他人との交流を求めてネットカフェに寝泊まりしていた。そこで万智は自腹を切ってそのテナントを購入し、閉店すると宣言。他に住むところがないネットカフェ難民が困ったところで、神子に「(ネットカフェを丸ごと買い取り、社会の)ふきだまりの殿堂を作ったらどうですか」とスケールの大きい提案をする。
他にも、「帰ってきた家売るオンナ」に登場した極貧のシングルマザー、「家売るオンナの逆襲」第3話に登場したトランスジェンダーの社会人ら、それぞれの事情を抱えた人たちを万智は見事に救済していく。そのやり方はかなり強引だし、善意からではなく、あくまで家を買ってもらうために顧客を分析しているのだが、結果的には多様性を認めることになっている。もしかしたら、現実社会をあらゆる人にとって暮らしやすくするためには、万智のように現実的でドラスティック(画期的)な提案をする人材が必要なのかもしれない。
万智自身もホームレスだったという過去を抱え、弱者の気持ちは充分に理解している。そんな背景も踏まえてこのシリーズを観ると、突拍子もない万智の行動が理解できて、いっそう面白くなるはずだ。
文=小田慶子
放送情報
家売るオンナ 一挙放送
放送日時:2019年8月11日(日)11:00~
スペシャルドラマ「帰ってきた家売るオンナ」
放送日時:2019年8月11日(日)20:20~
家売るオンナの逆襲
放送日時:2019年8月19日(月)15:00~
※毎週(月)~(金)15:00~
チャンネル:日テレプラス ドラマ・アニメ・音楽ライブ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
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