NHK朝の連続テレビ小説「エール」に主演し、注目を集める窪田正孝。福島で代々続く老舗呉服屋の長男でありながら、音楽との出会いによってその才能を開花。後に妻となるヒロイン・音と一緒に、音楽家の道を歩み始める主人公・古山裕一を好演している。
そんな彼の初期の代表作といえば、ヤンキーアクション『ガチバン』シリーズの黒永勇人は外せないだろう。2008年から2015年にかけて、主演を交代させながら23本が制作された『ガチバン』シリーズだが、その中で窪田演じる黒永勇人が出演するのは11本。その中から『ガチバンMAX2』『ガチバン アルティメット』が衛星劇場にて放送される。
窪田自身、「自分の転機となった作品」と公言する主演ドラマ「ケータイ捜査官7」のチームが手がけた映画作品ということで「やりたい」と手を挙げた本作。勇人が登場するシリーズは、東京の西の外れに位置する若王子地区で最強と恐れられるヤンキー・黒永勇人が、自分の思い描く不良道に磨きをかけるために高校を中退。流れ流れた土地で、さまざまな事件に巻き込まれるさまを描き出す。
ずる賢く立ち回ることができずに、許せない相手には拳でぶつかっていく。キレのあるアクションは、窪田の身体能力の高さがいかんなく発揮されており、第1回ジャパンアクションアワードでは、ベストアクション男優 優秀賞を獲得した。ボロボロになりながらも、強い相手にタイマンを挑み、武骨に立ち向かっていく姿は観る者の胸を熱くさせる。
しかし、『ガチバン』シリーズは、単なるヤンキードラマの枠内には収まらないところが魅力だ。例えばシリーズ第9作『ガチバン アルティメット』では、腐れ縁であるよっちゃん先輩(鈴之助)の裏切りにより、少年院に入ることになった勇人が大暴れ、シリーズ第10作『ガチバン MAXIMUM』では不似合いなホストに挑戦、そしてシリーズ第21作『ガチバン ULTRA MAX』では、なんと白血病に苦しむ少女(永野芽郁)との純愛模様が描かれる。いろんなジャンルの物語を貪欲に取り込む展開は予測不可能で、流浪の最強ヤンキーである勇人が、次はどこに流れ着くのだろうか、というのがシリーズを通じての楽しみだった。まさにプログラムピクチャーとしての面白さに満ちているシリーズだったと言える。
また、『ガチバン』シリーズには、黒永勇人のほかにも、全国制覇を目指す番長・森紋児(佐野和真)や、ヤミ金融業者という裏の顔を持つカリスマモデル・紅井レオ(荒井敦史)といった魅力的なキャラクターを主人公にした作品が数多く作られた。これらのキャラクターが、同じ世界観の中で、勇人と共演し、バトルを繰り広げる作品も作られるなど、ある種の『アベンジャーズ』的な楽しみもある。
実際、『ガチバン』シリーズに登場したヤクザ安藤忠臣(山田裕貴)がヤミ金業に転身した『闇金ドッグス』シリーズ、紅井レオの幼なじみである闇の運び屋(藤田玲)を主人公にした『我妻アベル』シリーズなども制作され、そのクロスオーバーする世界観は拡大化。これらのシリーズは製作会社の名前にちなみ、「AMG・アウトロームービー・ユニバース」と呼ばれた。
窪田自身、『ガチバン』シリーズの出演により「男性ファンが増えた」そうで、ここからオファーされる役柄の幅も広がったという。そんな彼の魅力が再発見できる『ガチバン』シリーズに注目してみたい。
文=壬生智裕
放送情報
ガチバン アルティメット
放送日時:2020年7月21日(火)1:45~
ガチバンMAX2
放送日時:2020年7月31日(金)1:30~
チャンネル:衛星劇場
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