坊主頭の森川葵と赤髪の菅田将暉が映し出す、リアルな青春

今年下半期、『リトル・サブカル・ウォーズ~ヴィレヴァン!の逆襲~』や『天外者』など次々と出演映画が封切られる若手女優・森川葵。昨今では、深夜のバラエティ番組「それって!?実際どうなの課」に出演し、クレーンゲームや石の水切り、テーブルクロス引きなどさまざまな達人のもとへ弟子入り。驚異的なスピードで達人たちを上回る"技"を習得して、注目を浴びている。

プレッシャーのかかる局面でも「私はできる」と言い聞かせ、実際に成功させてしまう森川の集中力は計り知れない。女優業でも出演作ごとに全く異なるキャラクターを見せ演技派と呼ばれる彼女だが、その類まれな集中力で挑む難役は今までも数多くの爪痕を残してきた。

「チョコリエッタ」に出演した森川葵、菅田将暉

(C)寿々福堂/アン・エンタテインメント

中でも髪型を坊主頭にして、抜群の演技力を持つ同年代の俳優・菅田将暉と共演した『チョコリエッタ』(2014年)は、彼女を語る上で欠かせない作品の1つだ。この作品が12月4日(金)衛星劇場で放送される。

森川扮する女子高校生の知世子は、幼い頃に母を亡くしたことで心を閉ざし、心を許せる唯一の存在だった愛犬ジュリエッタも死んでしまい孤独を募らせていた。母が好きだったフェデリコ・フェリーニの映画『道』を見せてもらったことをきっかけに、映画研究部の先輩・正宗(菅田将暉)と親しくなり、知世子を主人公にした映画を撮ることに。ふたりはカメラを片手に正宗のバイクで"ここではないどこか"を目指して旅に出る。

(C)寿々福堂/アン・エンタテインメント

まるで少年のような坊主頭にしたり、進路調査に「犬になりたい」と書いたりと、大人になることから遠ざかるように現実逃避をする知世子。常に不機嫌で生気のない声でポソポソと話したかと思えば、突然ワンワンと吠えてみせる。不安定で繊細な知世子を、肩の力が抜けた森川が演じることで、不思議系女の子とは異なる生々しい若さの痛みがにじみ出しているように感じる。

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またそれを受け止めるのは、菅田将暉演じる1学年上の先輩・正宗だ。正宗自身も両親の離婚後、爺様からもらったカメラのファインダー越しにしか世界と向き合えないという傷を負っている。それでいて、知世子の支離滅裂な言葉もトラウマも理解しようとしてくれる。赤髪でいつもカメラを構えていて、海を前に突然叫んだりもするけれど、「俺たちは諦めるために大人になるのかな」と心にぐっと刺さる言葉をぶっきらぼうに話す正宗。ふたりに飛躍的な成長は無いかもしれないが、わずかな変化がリアルな若者らしさを感じさせる。

(C)寿々福堂/アン・エンタテインメント

知世子も正宗もどちらも変わり者には違いない。しかし演じる役によって見た目も話し方も雰囲気もガラリと変えることができる森川と菅田が彼らに扮すると、それぞれの持つ世界観が一気に現実味を帯びてくる。今や個性派として映画やドラマで活躍する2人だが、彼らの演じる独特な青春は一見の価値がある。

文=津金美雪

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放送情報

チョコリエッタ
放送日時:2020年12月4日(金)18:45~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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