松本潤が主演を、有村架純がヒロインを務めた映画『ナラタージュ』(2017年)が12月12日(土)に映画・チャンネルNECOで放送される。原作は島本理生の同名小説で、メガホンをとったのは『世界の中心で、愛をさけぶ』などでおなじみの行定勲監督。すれ違っていく人間模様が切ない本作で松本が演じているのは、有村演じる泉から思いを寄せられる高校の演劇部の顧問教師、葉山。卒業してからもずっと先生への想いを断ち切れない泉に恋をする靴職人を目指す大学生、小野を坂口健太郎が演じている。
先生と生徒という関係だった時代、大学生になって再会してからの時代が『ナラタージュ』というタイトルのごとく回想シーンがはさみ込まれる手法によって構築され、たびたび出てくる"雨"の情景に静かに吸い込まれる本作の魅力とは?そして過去のトラウマで動けなくなった教師役で松本が見せる意外な顔とは?
■優柔不断で殻にこもった教師を演じる松本潤がヒロインを振り回す
松本演じる葉山先生は生徒に気を配る優しい心の持ち主で、プライベートは映画を見ることだけが趣味。家庭が崩壊した過去のトラウマを断ち切れず、前に進めないでいる役柄だ。目の焦点が合っていないような生気のない表情で、言いたいことがあっても飲み込んでしまうキャラクターは松本のイメージとは異なる。
有村演じる泉は転校した高校で学校になじめず、孤独に押しつぶされそうになっていたときに「演劇部に入ってみない?」と誘われたことで自分を取り戻し、やがて葉山に心惹かれるようになっていく。卒業間際に告白し、辛い過去を知ったことで「先生の力になりたいです」とまっすぐな気持ちをぶつける泉に対して「自分の幸せをちゃんと見つけてよ」と返す葉山は、優柔不断な男性。泉の気持ちを知りながら、卒業後に再会した後も電話をしてきたり、坂口演じる小野に嫉妬したりと、新しい恋に踏み出そうとした泉の時間をもストップさせてしまうという捉え方もできる。
人の心を敏感に察知する優しさがある一方で、放っておけない儚さ、危うさを感じさせる松本の演技から目が離せない。
■ラブストーリーの一言では言い表せない映画
煮え切らない葉山の態度に泉が頭からシャワーをかけて抱き合うシーンや、葉山への想いを引きずったままの泉の態度に小野がブチ切れるシーンなど3人の心の葛藤が丁寧に描かれている一方、単なるラブストーリーと言い切れない奥行きがあるのも本作の魅力だ。
映画の配給会社に勤めている泉の忙しい日常が描かれているが、彼女が肌身離さず持っている蓋付きの懐中時計は"雨"と同じく『ナラタージュ』を象徴するひとつのアイテムとも言える。
時間が止まったままの古びた時計が意味するものとは?映画が描き出すノスタルジックな世界観にじっくり浸って見たい映画だ。
文=山本弘子
放送情報
ナラタージュ
放送日時:2020年12月12日(土)21:00~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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