「ギルティ~この恋は罪ですか?~」「M 愛すべき人がいて」など、ドロドロの人間関係とキュンキュンする恋愛描写が交錯する"ドロキュン"ドラマがTwitterのトレンドワードを賑わせた今年。
往年の大映ドラマしかり、新たなブームを巻き起こした韓流ドラマしかり、予想外な設定が散りばめられた中毒性の高いドラマが反響を呼んできたが、かつて90年代にも「ずっとあなたが好きだった」(1992年)や「高校教師」(1993年)など、複雑な人間関係と恋愛をテーマにした物語は数多くあった。中でも究極の"ドロキュン"と言っても過言ではないのが、酒井法子、大沢たかお、竹野内豊が織り成す三角関係を描いた「星の金貨」(1995年)だ。
最終回には最高視聴率23.9%を叩き出した名作ドラマ「星の金貨」は、酒井法子扮する耳と口が不自由なヒロイン・彩と、彼女と結婚の約束をしていながら記憶喪失に陥ってしまうエリート医師・秀一(大沢たかお)、そして異母兄・秀一への一途な愛を知りつつ彩を思い続ける拓巳(竹野内豊)が織りなす物語だ。
そもそも彩は、聴覚障害を抱えている上、自分を捨てた親を待ち続けている...という複雑な生い立ちの女性。それでも心優しく純粋な彩は、北海道・美幌別の診療所に赴任してきた秀一と恋に落ち、一途なまでに彼を愛し続けたことで自らの運命を激変させていく。
大学病院への転勤が決まり、秀一が東京へ戻ってからは怒涛の展開に。東京に到着早々、事故に遭った秀一は記憶を喪失し、彩の存在も忘れて富豪の一人娘・祥子(細川直美)と急接近。一方、秀一を追いかけて上京した彩は彼が大病院である永世会病院の御曹司と知り、その院内で渦巻く陰謀にも巻き込まれてしまう。医療事故、刃傷沙汰...と、彩の周辺で不測の事態が次々と起こるが、やっと秀一の記憶が戻ったと思ったら、祥子が彼の子を身籠っていたことが発覚する...。果てには、入水自殺まで図ろうとする彩が不憫でならないのだが、そんな彼女を支えていたのが弟の拓巳だ。
当時24歳だった竹野内が演じた拓巳は、永世会病院の院長である父に認めてもらえず荒れた日々を送るプレイボーイ。そんな拓巳の前に突然現れた彩は、彼が今まで出会ったことのないタイプの純粋な女性で、興味を引かれる存在だった。気が付けば、彩が落ち込んでいる時にそばにいてくれるのはいつも拓巳。「なぜあなたは私にこんなに良くしてくれるの?」と彩が聞けば、「もう百回も言ったじゃないか。お前を愛しているからだ」と直球ストレートで攻める。
「『愛している』って手話でどうやるんだ?」と拓巳が彩に手話を教えてもらうシーンも、実ることのない彼の想いで胸がギュっと締め付けられる。極めつけは、拓巳が懸命に覚えた手話で、「おまえの気持ちが、俺に向くまで、待っててやるよ。ただし、百年だけな」と彩に告白をするシーン。もともとは不誠実のように見えた拓巳だが、実は誰よりも繊細で優しい男だったことが分かる名場面だ。
また、若き竹野内が演じる拓巳の寂しそうな瞳や、無垢な笑顔も魅力にあふれており、特に拓巳の心優しい一面がよりクローズアップされる続編「続・星の金貨」(1996年)では、「秀一じゃなくて、拓巳にしておけばいいのに...」と、彩に向って声を掛けたくなるほど。へヴィな展開で不遇を強いられる彼女にとって、常に近くで自分を支えてくれる拓巳の存在はひとつの救いだったような気がする。
本作での大ブレークを機に、見かけは遊び人だが内面はナイーブという当たり役を得た竹野内が、その後「ロング・バケーション」(1996年)「ビーチボーイズ」(1997年)と、次々にヒット作に出演していったのは周知の通り。来年4月からは、11年ぶりの月9主演となるリーガルドラマ「イチケイのカラス」への出演も決定するなど、20年以上にわたり第一線で活躍し続けている。
そんな竹野内のナイーブな魅力を改めて堪能すると共に、90年代ならではの破天荒かつピュアすぎる"ドロキュン"な世界観にこの機会にどっぷりと浸ってみてほしい。
文=津金美雪
放送情報
星の金貨
放送日時:2021年1月4日(月)6:00~
続・星の金貨
放送日時:2021年1月20日(水)6:00~
※毎週(月)~(金)6:00~
星の金貨 完結編
放送日時:2021年2月7日(日)2:00~
チャンネル:ホームドラマチャンネル 韓流・時代劇・国内ドラマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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