福山雅治が大人のラブストーリーで醸し出す、アーティストならではの繊細さ

1990年のシングル曲「追憶の雨の中」でシンガーソングライターとしてデビューした後、「HELLO」「桜坂」といったヒット曲を連発してきた福山雅治。そんな彼にとって、2020年は音楽活動30周年という節目の年となった。

また、アーティストだけでなく、俳優としても数々の話題作に出演。特に2010年の大河ドラマ「龍馬伝」や、2013年の是枝裕和監督作『そして父になる』などの作品を経て、俳優としての安定感がグッと増してきたように思われる。近年ではジョン・ウー監督、大友啓史監督、大根仁監督、岩井俊二監督など、名立たる監督たちの作品に参加。日本を代表する俳優として、確固たる地位を確立している。

「マチネの終わりに」に出演した福山雅治、石田ゆり子

そんな俳優・福山の新境地ともいうべき作品が、芥川賞作家・平野啓一郎の代表作を映画化した『マチネの終わりに』だ。この作品が1月に日本映画専門チャンネルでTV初放送される。

福山が演じる蒔野聡史は、若い頃からその才能を開花させ、天才の名をほしいままにしてきたクラシックギタリスト。だが年齢を重ね、キャリアを積み重ねるにつれて、彼の中で漠然とした不安に苛まれるようになる。才能ある若手の台頭もある。自身に課した理想の高さゆえに、自分の演奏にも満足がいかなくなるようにもなる。周囲の称賛の声とは裏腹に、心の中は不安や孤独感で沈んでいくばかり。そうしたアーティストならではの繊細さを内包した複雑な感情を、その雰囲気だけでさりげなく醸し出せるのは、演じる福山自身が俳優だけでなく、アーティストとしての軸足があるからだろう。

雑誌「キネマ旬報」に掲載されていた西谷弘監督のインタビューによると、撮影中、一部のシーンを除いて、彼の笑顔は封印。福山が本来持つ「チャーミングな笑顔」を見た観客が、"蒔野聡史"という人物を知る前に、福山雅治を感じてしまうことを危惧したから、というのがその理由。その言葉通り、本作では今まで我々があまり見たことがない、不安定さや脆さを抱えた姿を見ることができる。

そうした絶望の淵にいた彼が、パリの通信社でジャーナリストをしている小峰洋子(石田ゆり子)と運命の出会いを果たす。本作のパンフレットに掲載されている福山のコメントによると、蒔野が洋子に惹かれた理由については「あくまでも僕の解釈ですが、蒔野にとって洋子は表現のミューズだったのではないか」と感じていたという。洋子と人生を一緒に歩むことで、行き詰まっていた自分自身の"表現者としての覚醒"を期待したのではないかと。

一方の洋子もパリで遭遇した事件により恐怖心が植え付けられ、そんなときに蒔野の音楽に救われる。出会うべくして出会った2人だからこそ、運命のいたずらに翻弄されるさまは非常にもどかしく、非常に切ない。

文=壬生智裕

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放送情報

マチネの終わりに
放送日時:2021年1月10日(日)21:00~ほか
チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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