昨年のNHK朝の連続テレビ小説「エール」で主人公・古山裕一(窪田正孝)の妻・音役を好演し、年末には「NHK紅白歌合戦」で紅組司会に抜擢されるなど、大役を周囲の期待以上の出来で成し遂げる女優・二階堂ふみ。
2020年に『一度死んでみた』や『AWAKE』などの出演映画が封切られ、2月14日(日)からはNHK大河ドラマ「青天を衝け」で主人公の渋沢栄一を演じる吉沢亮。
ともに1994年生まれの二階堂と吉沢。今、多くの若手俳優がしのぎを削る日本の俳優界でも、最も熱い2人と言っても異論はほぼないだろう。二階堂と吉沢が初共演したのは2016年の映画『オオカミ少女と黒王子』の時のことだ。二階堂扮するヒロインに片思いするクラスメイト役で出演した吉沢。その吉沢について二階堂は「天才っているんだな」と思ったという。一方の吉沢も「(二階堂は)めちゃめちゃお芝居が上手い」と語っている。
そんな互いに尊敬し合う2人が、生きることにもがく高校生を体当たりで演じた映画が、3月1日(月)に映画・チャンネルNECOで放送される『リバーズ・エッジ』(2018年)だ。
同作は雑誌「CUTiE」で1993〜94年にかけて連載された岡崎京子の同名コミックを、『GO』(2001年)や『パレード』(2010年)などで若者の危うい感情を描いてきた行定勲監督が実写映画化した青春群像劇。物語は、二階堂演じる退屈な日々を過ごす女子高校生ハルナが、ハルナの恋人・観音崎(上杉柊平)にいじめられる同級生・山田一郎(吉沢亮)を助けたことから始まる。ハルナは山田に「僕の秘密の宝物、教えてあげる」と連れて行かれた夜の河原で、人間の死体を目の当たりにして絶句。山田と同じように死体を愛し、過食嘔吐を繰り返す後輩・吉川こずえ(SUMIRE)とともに3人は特異な友情で結ばれていく。
暴力や過食、ドラッグ、セックスなど若者の欲望と"生"、そして"死"を意識させる過激な描写が多い同作。あまりの激しさに「自分の十代の頃と100%共感!」とは、なり難いのかもしれないが、世界観にのめり込ませる力のある作品であることは間違いない。
そうさせるのはやはり、主演を飾った二階堂と吉沢の目で訴えかけるような演技によるものが大きい気がする。物語序盤の無気力で虚ろな目をしたハルナから、後半、感情をむき出して大粒の涙を流すまでに至る二階堂の演技の幅。そして、うつむきがちであった山田が死体を目の当たりにして、目を輝かせる吉沢の瞬き無しの芝居。そのどちらもがナチュラルで見ている者を納得させ、"生とは何か?""死とは何か?"と考えさせてしまう。
また、登場人物たちのインタビューシーンも秀逸だ。ある程度、返答の前置きがある上で、詳細のセリフはキャストにゆだねられ撮影したそうで、間の取り方や返答のリアルさも「この言葉は役者本人のものでは...?」と感じるほど。ハルナや山田という役が憑依したかのような2人に引っ張られ、物語に没入してしまう。
二階堂ふみと吉沢亮が画面の中でぶつけ合う"生々しい感情"。同作を見れば、今2人が熱い俳優である理由が分かる気がする。
文=津金美雪
放送情報
リバーズ・エッジ
放送日時:2021年3月1日(月)0:20~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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