松坂桃李、妥協を許さない役作りで挑んだ全盲の弁護士役

「全盲の僕が弁護士になった理由」より
「全盲の僕が弁護士になった理由」より

松坂桃李が全盲の弁護士役に挑戦したヒューマンドラマ「全盲の僕が弁護士になった理由」は、実在する弁護士・大胡田誠の著書を原案として、2014年にTBS系で放送された。

大胡田弁護士は、小学6年で視力を失いながらも「弱いものを助けたい」という強い意志を持ち、5回目のチャレンジで司法試験に合格。そんな彼の半生をつづった著作をもとに「目が見えないからこそ、感じられる」感性で、事件の真相に迫る姿を描いた気鋭のミステリードラマとして、同作は見ごたえ抜群の作品に仕上がっている。この作品が5月21日(金)チャンネル銀河で放送される。

■リアリティを追求した松坂桃李の演技

それを支えたのは、やはり主役を演じた松坂の演技力だといってもいい。ちょっとした会話のトーンや息づかいなど、通常なら見過ごされてしまいそうな小さなことを、松坂演じる主人公は敏感に感じ取り、見えない目で見逃さない。特に印象深いのは法廷シーンだ。緊迫した裁判に挑む主人公の奮闘ぶりが本作では忠実に再現されている。

松坂は、全盲の主人公を演じるにあたり、作品を見て研究したという。過去の作品ではサングラスを着用して演じるケースが多かったが、映画「セント・オブ・ウーマン」で全盲の主人公を演じたアル・パチーノの演技は、サングラスをかけなくても、まるで目が見えないかのように演じていたため、参考になったようだ。

さらに松坂は、原作者である大胡田弁護士とも面会し、「密着取材」を敢行。事務所に出向いて仕事の様子を見学するばかりでなく、彼の自宅にも訪問し、家族とも接するなど十分な準備をして撮影に臨んだ。松坂は、自らビデオカメラを手に、大胡田の一挙手一投足を徹底研究することで、目が見えない主人公の動きにリアリティを出せるように追求したのだ。役作りに妥協を許さない松坂のプロフェッショナルぶりに、大胡田も感心したそうだ。撮影現場でも事務所の演技指導を受けるなど、周囲の献身的なサポートにも恵まれて難役に挑んだ。

■個性豊かな共演者がドラマを盛り上げる

共演者も実力者がそろった。自らも全盲である妻・奈津美役に南沢奈央、彼を支えるアシスタント・美智代役の戸田恵子、離婚裁判の依頼人だが、主人公が全盲であることを不安に思う聡美役の星野真里、主人公を温かく見守る事務所の所長役に山本圭、なぜか投げやりな態度の殺人事件の被告人に仲野太賀と、芸達者な俳優陣が並ぶ。

さらに、殺人事件の鍵を握りそうな謎めいた職人役に泉谷しげる、主人公の足を引っ張りがちな先輩弁護士役の佐藤二朗など、魅力的な曲者俳優たちがドラマを盛り上げている。

脚本を担当した尾崎将也は、「結婚できない男」(フジテレビ系)などの代表作を持ち、苦悩する主人公を描かせたらピカイチといわれる。サスペンスやミステリーにも強い尾崎の描写力が本作でも大いに発揮されて、まさに第一級のヒューマンミステリーに仕上がっている。

本作で特に印象的なのは、全盲であるハンディを跳ね返すというより、「目が見えない」からこその観点で糸口を手繰りながら事件解決に導いていくという、目が見えないことを武器とする主人公の姿である。

コロナ禍で先の見えない不安な世の中だからこそ、主人公の強さが頼もしく、なんともいえないカタルシスがある。困難な状況と必死に戦っている人たちが多いであろう今、がんばる勇気を与えてくれそうな本作は、大きな意味があるのかもしれない。

文=渡辺敏樹(エディターズ・キャンプ)

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放送情報

全盲の僕が弁護士になった理由
放送日時:2021年5月21日(金)19:45~
チャンネル:チャンネル銀河 歴史ドラマ・サスペンス・日本のうた
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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