名実ともに日本を代表する女優・大竹しのぶ主演舞台「フェードル」。今年の1~2月に上演された本作は、大竹と日本演劇界を代表する演出家・栗山民也のタッグによる4年ぶりの再演だ。
「前回、上演中からみんなで『終わっちゃうのが悲しい』と言っていたんです。そうしたら栗山さんが『絶対に大丈夫、もう1回やれるから』とおっしゃって。何度演じてもいい芝居、いい戯曲であるほど『何度でも挑戦したい』という気持ちになるので、本当に再演が実現すると聞いた時は、やっぱりうれしかったです」
本作は17世紀フランスの劇作家であるジャン・ラシーヌによる戯曲だ。血のつながらない息子・イッポリットに恋をしてしまったアテネ王妃・フェードルの苦悩を、洗練された衣装と一切の無駄を省いた舞台美術で描き出す。
「私が演じるフェードルは、愛してはいけない人を愛したために苦しむ女性です。劇中で『好きなの~!!』と叫ぶせりふがあるんですが、『あのせりふ大好きです』という中年の方が5、6人いらっしゃいまして(笑)。みんな人を好きになりたいんだな、『あ~好きなの!!』って言いたいんだなと思いました。でも、誰かを好きになるというのは本当にすてきなことなので、そのエネルギーがお客さまにも届けばいいなと思います」
イッポリット役には、ドラマ「おっさんずラブ」('18年)などで知られる林遣都。
「以前から、お互いが出演する舞台を見に行ったり、楽屋でお話をしたりというのはありました。その時から、お芝居が本当に好きなんだなっていうのが、少し話しただけでも分かって。『一緒に一つのものを作ることができる仲間になれるな』と思っていました」
コロナ禍での上演は、彼女ほどの大ベテランにも気付きを与えてくれたという。
「この状況の中でも来てくださるお客さまの前に立つことは、やはり全く違いました。お客さまが覚悟を持って来てくださる、役者がそれに応える。劇場という空間はこのエネルギーでいっぱいになり、大きなうねりが起こるのです。演劇とはこういうものなのだと、改めて教えられました。毎日が千秋楽のようなカーテンコールを一生忘れません」
6月には衛星劇場で、東京公演を放送。「舞台で放出されるエネルギーが画面を通して伝わったらうれしいです。アップは見ないでね(笑)」
文=中村実香 撮影=田中亜紀
おおたけ・しのぶ●'57年7月17日生まれ、東京都出身。'75年のデビュー以来、気鋭の舞台演出家や映画監督の作品には欠かせない存在に。6月11日(金)公開の劇場アニメ「漁港の肉子ちゃん」では主人公の声を務める。
大竹しのぶが林遣都と共演した主演舞台を振り返る!「エネルギーが届けばいいなと思います」
放送情報
舞台「フェードル」
放送日時:2021年6月13日(日)16:00~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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