2021年もドラマでは中島健人×小芝風花の「彼女はキレイだった」、唐沢寿明の「ボイスⅡ 110緊急指令室」、大倉忠義の「知ってるワイフ」、映画では坂口健太郎の『劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班』など、韓国のリメイク作品が話題になっている。
7月にWOWOWで放送される吉高由里子×横浜流星の映画『きみの瞳が問いかけている』(2020年)も、ソ・ジソブ×ハン・ヒョジュの共演で、韓国で観客動員数130万人を超えるヒットを記録した映画『ただ君だけ』のリメイク作品だ。その『ただ君だけ』は、喜劇王チャールズ・チャップリンが盲目の花売り娘のために無償の愛を注ぐ男を描いた名作『街の灯』が原点。国に関係なく、人間の本質に問いかけるテーマを持つ作品ということだろう。
将来を有望視されたキックボクサーだった塁(横浜流星)は、ある事件への罪悪感から生きる屍のようなな生活を送っていた。夜間のバイト中に、視力を失った明香里(吉高由里子)と出会い、2人は次第に惹かれあっていく。ある日塁は、自分がかかわった事件と彼女が視力と両親を失ったことの因果関係を知ることに――。
この作品では、横浜流星の美しさと変化に注目してほしい。冒頭の荒んでいる塁は、身だしなみにも無関心で、目が見えない明香里は感じ取った雰囲気から"カッコよくないおじさん"だと思いこんだほど。そんなボロボロの横浜流星さえも、退廃的で美しい。
明香里と出会い人を愛することを知った塁は、再び"生きる"気力を取り戻し、キックボクサーとして再出発しようとするのだが、ボクシングシーンでの横浜流星の鍛え上げられた肉体、そして、空手の世界大会優勝という経験をもつ横浜流星の本気度には、見入ること間違いナシ。
塁にとって「明香里=希望の光」だが、彼の人生に常に「影」をもたらすのが、町田啓太演じる半グレ集団のボス、佐久間恭介だ。同じ児童養護施設で育った塁と恭介。不幸な生い立ちから逃れられず闇に沈んでいく恭介と、光を求めて這い上がろうとする塁。恭介というの存在は、本作の見どころでもある「塁の光と影」の変化を色濃くさせる重要な役回りなのだ。イイ人キャラのイメージも強い町田啓太だが、彼の演じる「やべーヤツ」は短い登場シーンでも爪痕を残す。影を引きずる町田啓太の悪役ぶりも見逃せない。
この悲しくも美しい物語をさらに引き立てているのが、ワールドスターのBTSが歌う主題歌「Your eyes tell」。JUNG KOOKが作曲に参加した繊細で美しいメロディに、横浜流星演じる塁の心情を投影したかのような歌詞がまた、見ている者の胸を締め付ける。
不幸な生い立ち、運命的な出会い、立ちふさがる壁...など、韓国ドラマ要素満載のストーリーだが、不器用だが誠実な塁と天使のような明香里の物語は、見た目や地位やお金にとらわれない「美女と野獣」のような"究極の純愛ストーリー"だ。2人の行く末がどうなるかは、作品を見て確認してほしい。
文=坂本ゆかり
放送情報
きみの瞳が問いかけている
放送日時:2021年7月24日(土)13:00~ほか
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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