2011年「東宝シンデレラ」オーディションをきっかけに、デビューを果たした浜辺美波。順調にキャリアを積み2017年には映画『君の膵臓をたべたい』でヒロインを演じてブレイク、日本アカデミー賞新人俳優賞も受賞した。透明感のある魅力的な演技が高く評価されている。
そんな浜辺が、2020年に主演したテレビ朝日系のドラマが「アリバイ崩し承ります」である。同作は、テレビ朝日の人気ドラマ「トリック」「時効警察」に続く、「"男女凸凹バディーもの"の決定版」という触れ込みで制作され、原作は「2019本格ミステリ・ベスト10」で1位に輝いた小説。トリックの名手として、大山誠一郎による原作は、本格派ミステリーにも関わらず、気軽に謎解きを楽しめる小説として評価が高い。
浜辺の役どころは、1回5000円で"アリバイ崩し"を承るという好奇心旺盛な時計店の店主・美谷時乃。なぜ時計店の店主が探偵役を果たすのかというと、"アリバイ崩しは時間にまつわる仕事だから、時計店で働く者こそアリバイの問題を扱うにふさわしい"という信念をもって、祖父から時計修理の技術とアリバイ崩しのノウハウを仕込まれたのだ。やがて他界した祖父の跡を継いで店主となり、時計の修理作業と並行しながら事件の真相を解明する名探偵役を務めるという、なかなか興味深い設定だ。
時乃とともに難事件の解決に挑むのは、刑事の察時美幸で、演じるのは安田顕。警察庁勤務のキャリア組であったが、庁内の汚職を暴こうとして反撃され、"那野県警"に左遷されたという過去を持つ。
物語は時乃が暮らす町に左遷されてきた察時刑事が、時乃の勘違いから時計店の二階に居候する場面からスタート。キャリア刑事でプライドの高い察時は、じつは捜査が不得意のため、葛藤しながらもアリバイ崩しの名人である時乃に推理を依頼することになる。こうして図らずも「相棒」となった時乃と察時コンビが、巧妙に仕掛けられたアリバイを崩していくというストーリーだ。
察時の部下にあたる県警の刑事・渡海雄馬には、近年の活躍がめざましい若手実力派俳優の成田凌が起用された。国会議員の父を持つエリート刑事だが、上司の察時には反発。じつは内緒で時乃の力を借りて事件を解決する察時に疑念を抱き、協力者の存在を疑うという立場。ちなみに雄馬の役は、原作にはないドラマのオリジナルキャラクターである。
さらに、同局の「ドクターX」シリーズなどでコミカルな演技に定評のある勝村政信が、本作では県警捜査一課の牧村係長役で出演。渡海の父親が国会議員であることから、彼に異常に忖度してあからさまにべた褒めする様子などが珍妙に描かれる。ほかにも時乃の祖父・時生役で森本レオが共演。ちょっとややこしいのだが、祖父の役名と名前が同じ柄本時生が、県警の鑑識係・樋口役で共演している。圧倒的な存在感を放つ柄本は、本作においても大いに存在感を発揮しており、注目だ。
そんな実力派俳優たちが揃い踏みした本作は、本格ミステリーとしての原作の魅力を存分に生かしつつ、浜辺や安田、成田らのキャラクターの魅力が光り、毎回画面に引き込んでくれる。浜辺の演技は、原作の物静かなイメージとやや異なる、アクティブな一面を持った、彼女なりの時乃像を見事に作り上げたという印象だ。共演した安田も、"主役なのに偉ぶらない"と、浜辺の人間性を絶賛している。そんな彼女の人間的な魅力が演技にも生かされていることは疑いない。
浜辺の魅力が炸裂する「アリバイ崩し承ります」は、この8月にテレ朝チャンネル2で放送される。見逃していた人はもちろん、既に見たという人もまた、彼女の魅力を再発見できるのではないだろうか。
文=渡辺敏樹(エディターズ・キャンプ)
放送情報
アリバイ崩し承ります
放送日時:2021年8月4日(水)23:10~
チャンネル:テレ朝チャンネル2 ニュース・情報・スポーツ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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