野田秀樹が脚本、演出を手がけたNODA・MAP第24回公演『フェイクスピア』に主演するなど、舞台、映画、ドラマと幅広く活躍している高橋一生。俳優としての実力が幅広い世代から評価されている高橋にとって、民放のゴールデン・プライム帯の連ドラ初主演となったのが、8月にホームドラマチャンネルで放送される「僕らは奇跡でできている」(2018年)だ。
演じているのは大学で動物行動学を教えている講師、相河一輝。高橋自身、登山やサイクリングなどアウトドアが趣味なのは有名な話だが、一輝は子どもの頃から森や自然の中でいろいろなことを学びとってきた主人公。社会のルールには馴染めないが、少年のように無邪気な笑顔と好奇心で周囲の人たちを惹きつけ、あきれさせることもある。"ちょっと面倒くさいけど、こんな人がいたら楽しいだろうな"と思わせてくれる人物だ。"僕キセ"で高橋が演じた個性あふれる役とは?
■面白がる天才と言われる一輝の生態とは
一輝はジョージと名付けた亀を飼っていて、家政婦の山田さん(戸田恵子)と同居する生活を送っている。大好物は山田さんが作るピリ辛キュウリで、お弁当も作ってもらっているが、自分の部屋に山田さんが入ることを嫌がり、しばしばモメることも。遅刻癖があり、大学で「また遅刻しましたね」と怒られても「そうでしたっけ?」と悪びれず、准教授(要潤)から何かと敵対視されている。学生が寝ていようと、スマホを見ていようと、生物の生態について、生き生きした表情で楽しそうに語り、最初はドン引きしていた学生(西畑大吾[なにわ男子/関西ジャニーズJr.]、矢作穂香らが出演)も次第に一輝に興味を持っていく。
そんな一輝がリスペクトしているのは子どもの頃からみんなと同じことができなかった自分を肯定してくれた陶芸家の祖父(田中泯)で、今もおじいちゃんからのアドバイスを守り、一輝を大学の講師へと導いてくれた鮫島教授(小林薫)を慕っている。「謎です」が口癖で、友達は歯医者で出会った小学生の虹一(川口和空)。2人で動物園に行く回でも一悶着あるが、大人になると忘れてしまう感受性や信じる気持ちを持ち続けている一輝だからこその対処や友情にほっこりさせられる。
■一輝と榮倉奈々演じる歯科医・水本育実の関係も気になる
我慢できない歯の痛みに嫌々、歯医者に行く一輝の治療にあたるのが、親の代からの歯科医を引き継いだ仕事ができる歯科医の育実(榮倉奈々)だ。真面目で責任感が強い彼女は歯を抜くのを嫌がって帰ろうとしたり、予約時間に遅刻して電話も入れず動物の話をしゃべりまくったりする一輝にイライラ。一輝がロマンティストであるならば、育実はリアリストで、自分のポジションや見られ方にこだわるゆえに彼氏との関係もギクシャクしていく。
マイペースな一輝に「常識っていうものがないんですか?」と怒っていた育実は、好きなものに熱中し、少し人に迷惑をかけても楽しんで今を生きている一輝の姿に触れ、自分の生き方を見つめ直していく。
現実の世の中では一輝は人に合わせられず、空気を読めない変な人の部類。だが、彼の視点や発言には便利や効率や忖度を重視してしまいがちな人間をハッとさせる気づきが散りばめられている。高橋の演技はちょっと変わった人物を輝かせる。高橋にしか演じられない役だと言えるだろう。
文=山本弘子
放送情報
僕らは奇跡でできている
放送日時:2021年8月21日(土)18:30~
チャンネル:ホームドラマチャンネル 韓流・時代劇・国内ドラマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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