東野圭吾原作・阿部寛主演の人気ドラマ「新参者」の劇場版 「麒麟の翼~劇場版・新参者~」(2012年)が8月にTBSチャンネルで放映される。阿部寛演じる刑事、加賀恭一郎が難事件を次々に解決していく東野圭吾のシリーズ小説を映像化した作品で、事件の真相が読めないストーリー展開に引き込まれていく映画も当時、大ヒットを記録した。日本橋の麒麟像にもたれかかるように息絶えた被害者、青柳(中井貴一)は、一体誰にどういう理由で殺害されたのか?なぜ、彼は誰にも助けを求めることなく、刺されたまま8分間も歩いて麒麟像を目指したのか?その謎を加賀が鋭い洞察力と、足を使った粘り強い捜査で解き明かしていく。
本作がミステリー初挑戦となった新垣結衣をはじめ、溝端淳平、松坂桃李、菅田将暉、山崎賢人、黒木メイサ、山崎努、三浦貴大、田中麗奈、柄本時夫、劇団ひとりなど、のちに大ブレイクする俳優など豪華キャストが集結しているのも見どころのひとつ。約130分があっという間に感じられるこの映画の魅力とは?
■謎が謎を呼ぶ複雑な事件を紐解いていく面白さ
橋沿いをふらふら歩いている男を酔っ払いかと思った警官が呼び止めると、その男、青柳は何者かにナイフで刺されていた。被害者の近くで潜んでいたため、容疑者として取り押さえられそうになるものの、逃走する途中でトラックにひかれ、意識不明になってしまうのが八島冬樹(三浦貴大)。そして冬樹と同居している恋人、中原香織を新垣結衣が演じている。容疑者が青柳のバッグなどを持っていたことから、警察は犯人と断定しようとするが、加賀はバッグに入っていた私物について聞き取り調査を行い、青柳が週末になるとデジタルカメラを持って人形町に向かい、七福神巡りをしていたという遺族も知らない不思議な事実を突き止める。
青柳と八島の意外な接点、青柳と高校生の息子(松坂桃李)とのギクシャクした関係。聞き込み捜査の中、相手のちょっとした表情の変化や言葉を見逃さない加賀の推理が点と点を1本の線でつないでいく。ドラマにひき続き、出演しているのは天然なキャラが視聴者を癒した加賀のバディー役の溝端淳平と時に心強い助っ人となる記者役の黒木メイサだ。
■恋人をかばうヒロイン・新垣結衣を見つめる阿部寛の人間味あふれる視線
阿部寛と「ドラゴン桜」以来、6年ぶりに共演したことも話題となった新垣結衣。映画では刑事と、容疑者の恋人という関係だ。
恋人と3年前に上京し、貧しい暮らしの中でも夢を見て生きてきた中原が、失意の中で発する言葉を受け止め、その想いを読み取ろうとする加賀の視線は深く温かい。青柳の息子・悠人とのやりとりの中にも愛があり、父親(山崎努)との確執に悩んできた刑事だからこその視点がある。物語の象徴となっているのは日本橋の麒麟像。創造上の生き物である麒麟に翼が生えているのは日本の道路の起点として、日本中に飛び立っていけるように願いを込めて創られたものだから。そのロマンも感じさせてくれる見応えたっぷりのヒューマンミステリーだ。
文=山本弘子
放送情報
麒麟の翼~劇場版・新参者~
放送日時:2021年8月15日(日)13:10~
チャンネル:TBSチャンネル1
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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