竹内結子の代表作のひとつ、ノンキャリアながらキレもの刑事として出世していく姫川玲子を演じた「ストロベリーナイト」。ドラマとしてはのちに二階堂ふみと亀梨和也のW主演で「ストロベリーナイト・サーガ」が放送されたのも記憶に新しいが、ひとりの女性としての姫川玲子にフォーカスを当てた劇場版「ストロベリーナイト」は、ドラマとはまた違う持ち味がある。
原作は誉田哲也による"姫川玲子シリーズ"の中でも最高傑作と言われる声がある「インビジブルレイン」。映画には孤独を背負った暴力団の牧田勲役で大沢たかおが出演し、竹内結子とのラブシーンも話題となった。とは言え、本作でも正しいと思ったことは曲げない性格の姫川はキレッキレ。タレコミによって浮上した殺人事件の容疑者・柳井健斗(染谷将太)が何者なのか気になり、上司の説得に屈せず、単独で捜査に乗り出す。そうして柳井が住んでいるアパートのそばで張り込んでいたときに出会うのが牧田だ。ヤクザと知らず熱心に聞き込みをする姫川は、牧田と会う内に彼の闇に触れることになる。ほぼ全編、雨が降っていることでも話題となった劇場版で竹内が見せた顔とは?
■姫川と牧田、菊田(西島秀俊)の切ない三角関係?
シリーズでおなじみの姫川班の面々も登場するので、ドラマを見ていた人にとっては背景や細かい描写まで楽しめる劇場版。本作で特にクローズアップされる捜査一課のメンバーは姫川と、彼女に想いを寄せている忠実な部下の菊田だ。事件解決のためにチームに黙って暴走する姫川を案じ、陰からフォローする菊田の姿には思わずエールを送りたくなる。
不動産会社の名刺を持っていた牧田の本当の顔を知った後も、姫川は彼とコンタクトをとり続け、いつしか2人は惹かれあっていく。家族を失った悲しい過去を持つ牧田が姫川に同じ匂いを感じると告げ、抱き合うシーンでは、車で後を追っていた菊田が状況を察し、雨の中で呆然とたたずむ描写がなんとも言えず切ない。ヤクザ者でありながら普段は穏やかで、男の色気を感じさせる大沢たかおの演技も光っている。
■"姫川の執念"を感じさせる竹内結子の演技
高校時代に犯罪被害にあった過去を持つ姫川。そのことが劇場版で語られることはないが、彼女の犯罪者への憎しみが消えていないことを象徴する場面がいくつか登場する。
ひとつは映画の冒頭で菊田と交わされるなにげない会話。姫川がなぜバーキンのバッグの赤を選んだのかという理由はのちに明かされることになる。牧田と関係を持った後で、家に帰ってバスタブに入るシーンも印象的だ。その目の中にあるのは甘いひとときを振り返る感傷的なものではなく、負けないという執念や憎しみにも似た強い光のように思える。
そんな竹内結子の気迫に満ちた演技も見どころのひとつ。テーマは"喪失"だというが、降りしきる雨もそのことを象徴している。
文=山本弘子
放送情報
ストロベリーナイト<PG-12>
放送日時:2021年9月4日(土)22:20~ほか
チャンネル:日本映画専門チャンネル
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