窪田正孝が全身傷だらけの殺し屋を好演!藤原竜也主演映画『Diner ダイナー』

およそ1年にわたって撮影が行われた昨年のNHK朝の連続テレビ小説「エール」を終えて、以前にも増してその動向が注目されている俳優・窪田正孝。10月からは、天才放射線技師を演じるテレビドラマ「ラジエーションハウスII~放射線科の診断レポート~」が放送されるのをはじめ、来年早々には政界を舞台としたコメディー映画『決戦は日曜日』も公開予定と、主演作がめじろ押し。今後もさらなる進化が期待されている。

「憑依型俳優」と呼ばれることも多い窪田だが、そんな彼が、優しさと狂気が同居した複雑な内面を持つ殺し屋を熱演している映画が、2019年に公開された『Diner ダイナー』だ。「とにかく登場人物が全員カッコ良く、美しくあること」にこだわったという本作は、蜷川実花監督ならではの色彩と美学に彩られているバイオレンスアクションだ。

映画『Diner ダイナー』で殺し屋・スキンを演じた窪田正孝

本作の舞台は、命がゴミのように扱われる、殺し屋専用のダイナー(食堂)。店主は元殺し屋で天才シェフのボンベロ(藤原竜也)。日給30万の怪しいアルバイトに手を出したオオバカナコ(玉城ティナ)は、ウエートレスとして身売りされてしまい、ダイナーで働くことになる。客は全員殺し屋という一触即発の状況の中で、カナコは身の危険を感じる日々を送っていたが、ある日、ついに殺し合いゲームが始まってしまう――。

窪田が演じるのは、ナイーブさと優しさを持ちながらも、その内面にはナイフのように狂気が潜んでいる殺し屋のスキン。ボンベロとは古い仲で、食堂での立ち居振る舞いは基本的には紳士的。つらい境遇のカナコには同情的で、彼女を助けたいと思っているが、その奥にはボンベロだけが知っている大きな秘密がある......という役柄だ。蜷川監督自身、インタビューなどでスキンのことを「個人的に大好きな役」と公言しており、キャラクターとしても、理想の男性像を詰め込んだという。

何よりも特筆すべきは、全身がすさまじい傷で覆われているスキンのビジュアルだろう。この特殊メークは、蜷川監督からスタッフに「世界で一番カッコいい傷跡にしてほしい」とリクエストされたもので、端正な顔立ちとは裏腹に、顔を覆うように広がっている傷、というコントラストは、スキンの複雑な内面性を的確に表現している。また、蜷川監督からは、少し鍛えてほしいというリクエストもあったそうで、窪田がその鍛え上げられた肉体を披露するシーンもある。

藤原竜也
玉城ティナ

本作は、2016年に急逝した演出家・蜷川幸雄の"まな娘"蜷川実花が監督を務め、そして蜷川幸雄に見いだされた"まな弟子"の藤原竜也が主演を務める。劇中では、藤原演じるボンベロが「僕を見つけて、育ててくれたのは(大ボスの)デルモニコだ」と語るシーンがあるが、そのシーンに飾られているデルモニコの肖像画は、まさに蜷川幸雄そのもの。こうした虚実入り交じった設定はグッとくるものがある。

一方の窪田も、2013年に蜷川幸雄が演出を務めた舞台「唐版 滝の白糸」に出演。蜷川の薫陶を受けた経験を持つ。その時のポスタービジュアルを担当したのが、本作のメガホンをとった蜷川実花監督だった。ついでに言えば、藤原も、2000年に蜷川演出の舞台「唐版 滝の白糸」に出演している。まさに蜷川幸雄を中心とした縁がつながってできあがった作品だと言えるだろう。

そして映画『DEATH NOTE デスノート』といえば、藤原が主役の夜神月を演じ、彼の代表作のひとつとなったが、そのテレビドラマ版で窪田が同じ役を演じたという縁もある。窪田自身、しばしばインタビューなどで、尊敬する俳優として藤原の名前を挙げており、本作での共演も刺激的な日々だったという。そんな不思議な縁でつながっている2人の共演作として本作に注目してみるのも面白い。

文=壬生智裕

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放送情報

Diner ダイナー
放送日時:2021年9月5日(日)19:45~
チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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