2013年、男性ファッション誌のモデルとして芸能界入りした成田凌だが、当時から「俳優になりたい」と宣言するなど、デビュー当初から役者志望だったという。その言葉通り、翌年の暮れには高梨臨とのW主演となるドラマ「FLASHBACK」で俳優デビューを果たし、その後も映画、ドラマなどにコンスタントに出演。俳優として順調にキャリアを積み重ねていった。そして「学校のカイダン」「ふれなばおちん」「逃げるは恥だが役に立つ」「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-THE THIRD SEASON」「わろてんか」といったドラマ作品に出演し、着実に知名度を上げていった成田だが、その演じる役柄は幅広く、人のいい好青年からダメ男、ワイルドな役や狂気をはらんだ役など、作品ごとに違った顔を見せている。
そんな成田が俳優として上り調子だった2018年。北川景子主演の映画『スマホを落としただけなのに』に浦野役で出演した成田は、観客に強烈なインパクトをもたらす演技を見せつけ、自身の演技の才能を改めて世間に知らしめた。
原作は志駕晃によるベストセラー小説。北川景子演じる麻美は、恋人がタクシーにスマホを忘れたことをきっかけに、ネットストーキングや、SNSアカウントの乗っ取り、さらには誰にも見られたくなかった写真をSNSにアップされてしまうなど、最悪の状況に追い込まれていく。落としたスマホから個人情報が流出したのか?SNS時代ならではの恐怖を描いたミステリー作品だ。
同作のメガホンをとったのは、『リング』『仄暗い水の底から』などで知られる中田秀夫監督。劇中では『サイコ』『めまい』『見知らぬ乗客』など、サスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督のオマージュがふんだんに織り込まれており、ハラハラドキドキするようなサスペンスを盛り上げている。実際に成田にも、クランクイン前に『サイコ』を観るようにリクエストしたという(ちなみに2020年公開の続編で参考にしたのは『羊たちの沈黙』だった)。
劇中では、千葉雄大が演じる刑事・加賀谷と、成田演じる浦野が、互いに過去に似たようなつらい経験を持ちながらも、それぞれが光と影という別々の道を歩むこととなる、表裏一体の存在として描かれている。その2人の関係性は、2020年公開の続編『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』でより深掘りして描かれることとなるが、本作の刀根鉄太プロデューサーも、パンフレットのインタビューで「この映画で初めて気付く方もいると思いますがお2人の目はとても似ているんです。衣装合わせでそれに気付いた時、これはいける!と確信しました」と本作のキャスティングに自信を見せる。そうした2人の奇妙な関係性も、本作の見どころのひとつとなっている。
文=壬生智裕
放送情報
スマホを落としただけなのに
放送日時:2021年9月23日(木・祝)23:00~ほか
※10月24日(日)18:50~は「スマホを落としただけなのに」シリーズ2作を一挙放送
チャンネル:日本映画専門チャンネル
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