摩訶不思議な世界観!長澤まさみ松田龍平、難役でそれぞれのイメージを覆す役者力

「散歩する侵略者」
「散歩する侵略者」

長澤まさみの進化が止まらない。「コンフィデンスマンJP」シリーズでは振り切った演技でコメディエンヌぶりを炸裂させ、『キングダム』(2019年)では山の民の王・楊端和を圧倒的な美しさとカリスマ性で演じ切り、自堕落なシングルマザーを演じた『MOTHER マザー』(2020年)では日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝くなど、縦横無尽に女優としての魅力を発揮している。そんな彼女が摩訶不思議な"黒沢清ワールド"に飛び込んだのが、『散歩する侵略者』(2017年)だ。

これまでもホラー仕立ての映画を数多く手掛けて国境を越えて愛されている黒沢清監督が、前川知大率いる劇団イキウメの人気舞台を映画化した本作。数日間行方不明だった夫の真治(松田龍平)がようやく家に戻って来たものの、それまでとはどこか違う彼の態度や言動に戸惑いといらだちを募らせる妻の鳴海(長澤)。けれどもそんな彼女にはお構いなしに、真治は毎日ふらふらと散歩に出掛けては、何やら不可思議な行動を繰り返す。そのころ町では、とある一家が惨殺されるなど奇妙な出来事が次々と発生。不穏な空気が漂う中、真治が「俺さ、本当は宇宙人なんだ。地球を侵略に来たんだ」と告白するなど、刺激的で先の読めない展開で観客を釘付けにする。

豪華キャストの競演で人気舞台を映画化した「散歩する侵略者」
豪華キャストの競演で人気舞台を映画化した「散歩する侵略者」

(C)2017「散歩する侵略者」製作委員会

異星人による地球侵略もののSFサスペンスを主軸に据えつつも、コメディやホラー、アクション、ラブロマンスの要素が盛り込まれ、"黒沢清ワールド"が繰り広げられる作品としてオススメしたい1作だが、難役を演じた長澤と松田の役者力にも惚れ惚れとさせられる。

鳴海は常識はずれの言動を連発する夫のことが理解できず、イライラし通し。"怒る長澤まさみ"を目一杯、堪能できると言えるほどキレまくる。一方の松田が演じたのは、真治に見えながらも、その正体は"地球侵略のために彼の身体を乗っ取った侵略者"という役どころ。ミステリアスでありながらどこか飄々とした雰囲気のある松田がこの侵略者役にぴったりで、物語が進むごとに彼がかわいらしくも見えてくるから不思議だ。

次第に鳴海と真治の間に存在する"愛"が浮き上がる点が大きな見どころで、鳴海は怒りながらも決して彼を見捨てようとはしない。侵略者を捕まえようとする追手が現れると、鳴海は「逃げられるところまで逃げよう」と覚悟するのだ。また人間の概念を奪っていく侵略者である真治も、鳴海のことを知っていこうとする。

そんな2人のやり取りは、"パートナー"という関係を構築し、探求していく過程のよう。とりわけクライマックスにかけて長澤が体現する愛はすばらしく、真治に胸の内を伝えようとする熱っぽい眼差しは、忘れ難い輝きを放っている。

「スパイの妻<劇場版>」
「スパイの妻<劇場版>」

(C)2020 NHK, NEP, Incline, C&I

黒沢監督といえば、『スパイの妻<劇場版>』でも1組の夫婦の運命をスリリングに描いている。第77回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した本作は、太平洋戦争開幕前夜の日本を舞台に、恐ろしい国家機密を知ってしまった貿易会社の社長・優作(高橋一生)と、その妻・聡子(蒼井優)の波乱の運命を追う物語だ。

「スパイの妻<劇場版>」
「スパイの妻<劇場版>」

(C)2020 NHK, NEP, Incline, C&I

徐々に優作の秘密が明らかとなり、高橋が本心の見えない不気味な男を見事に演じている。また蒼井も幸せな夫婦関係を守ろうとする妻を、目が離せないほどの迫力とともに表現している。黒沢監督は『散歩する侵略者』と『スパイの妻<劇場版>』の両作で、夫婦という関係性を揺さぶり、その亀裂から浮かび上がるものを捉えている。「愛ってなんだろう?」と考えてみたくなる2作品で、それぞれの夫婦の行く末をぜひ見届けてみてはいかがだろう。

文=成田おり枝

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放送情報

散歩する侵略者
放送日時:2021年12月14日(火)21:00~
スパイの妻<劇場版>
放送日時:2021年12月12日(日)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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