約2年ぶりに完全新作として帰ってくるドラマ「義母と娘のブルース 2022年謹賀新年スペシャル」(2022年1月2日(日)TBS系列で放送)での共演が注目を集めている綾瀬はるかと佐藤健。
息の合った芝居だけでなく、綾瀬は佐藤のことを「たけちゃん」と呼んでいると過去に明かしており、仲の良さが伺える2人。そんな2人が初共演した作品が映画『リアル~完全なる首長竜の日~』(2013年)だ。同作は"ぎぼむす"とは毛色を異にするSF作品とあって、今改めて視聴するとこれまでの2人のイメージが覆されること必至であるように思う。
『リアル~完全なる首長竜の日~』は、第9回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した乾緑郎の小説を、『トウキョウソナタ』(2008)などを手がけた鬼才・黒沢清監督が映画化したミステリー・ラブロマンスだ。
物語の主人公は幼なじみで恋人同士の浩市(佐藤健)と淳美(綾瀬はるか)。1年前、ホラー漫画家の淳美は自殺未遂がきっかけで昏睡状態に陥ってしまう。浩市は淳美を目覚めさせるため"センシング"という最新医療によって彼女の意識の中へ入っていくことに。「なぜ自殺したのか」という浩市の問いに、意識の中の淳美は「首長竜の絵を探してきてほしい」と頼むばかりだった。現実の世界では首長竜の絵を探し、"センシング"によって何度も彼女の脳内で対話を続ける浩市。ある日、そんな浩市に見覚えのない少年の幻覚が現れるようになる。
現実の世界と淳美の潜在意識の世界を行き来するという難解な役どころを演じた佐藤。劇中では代表作『るろうに剣心』シリーズの緋村剣心のような鋭い眼光は一切見せず、魂の抜けたような虚ろな表情が見る者を不安にさせる。また、ホラー漫画家である淳美を演じた綾瀬は、彼女が脳内でイメージする死体など不気味な演出の中で不敵に笑みを浮かべたり、水浸しの部屋の中で混乱状態に陥ったりしているのだ。
2人の抑えた芝居により必然的掻き立てられる視聴者の想像力に加え、必要以上のズームアップや浩市が運転する車から見える不自然な風景など練られた演出。意味ありげに焦点を当てられたドアから「何か出てくるんじゃないか...」とミスリードさせる黒沢監督ならではの手法も面白い。
物語の後半、2人がまた現実世界で暮らせるのではという予兆に加速する愛しい人を取り戻したいという佐藤、綾瀬双方の感情の機微も見逃せない。
コミカルなやり取りはないものの、序盤の小さな不自然や違和感が解消されていく過程そのものが見どころである本作。昨今の作品とはまた違う、独特の空気感を醸し出す佐藤と綾瀬の芝居に驚かされるに違いない。
文=津金美雪
放送情報
映画「リアル~完全なる首長竜の日~」
放送日時:2021年12月17日(金)23:10~
チャンネル:TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画
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