1960年代後半、ザ・タイガースのボーカルとしてスーパースターとなった沢田研二は、ソロ活動でも続々とヒット曲を飛ばし、1977年発売の「勝手にしやがれ」で日本レコード大賞を受賞するなど、トップアーティストとして君臨。同時に、俳優としての活動にも力を入れ、1979年に公開された映画『太陽を盗んだ男』では、原子爆弾を作って政府を脅迫する理科教師・城戸を演じた。同作での沢田の演技は高く評価され、第4回報知映画賞でグランプリにあたる作品賞と主演男優賞を受賞するなど、大きな話題を呼んだ。1981年には映画『魔界転生』で天草四郎役を演じ、観客動員数200万人を記録するヒット作になっている。
音楽的な才能と天性のボーカリストとしての実力は申し分ない上に、俳優としても独特の色気と細やかな表現力を発揮。画面上での沢田は、まさに唯一無二の個性と存在感を放っている。そんな沢田が出演し、1984年元日に放送されたスペシャルドラマが「ジュリーと鉄矢の"源氏物語'84"」だ。この作品が2022年1月4日(火)に衛星劇場で放送される。
本作は、「源氏物語」と銘打ってはいるものの、光源氏ではなく、薫大将が主人公である。沢田演じる薫大将は、表向きは光源氏の次男とされているものの、実は光源氏の正妻・女三の宮の不義の子。源氏物語の「宇治十帖」の中心人物の1人で、原作では光源氏の孫にあたる匂の宮と三角関係になる。いわば2人の貴公子が美女を取り合う悲恋の物語なのだが、このドラマはちょっと趣向を変えて、沢田演じる薫大将と、武田鉄矢演じる匂の宮が3人の美女を相手にモテ方を競い合うというコメディ仕立てにアレンジしている。
2人の恋のお相手となる3人を演じたのが、小柳ルミ子、池上季実子、大竹しのぶ。池上は、前出の映画『太陽と盗んだ男』でも沢田と共演。同作では、沢田演じる主人公が哀調するラジオ番組の人気DJ役として印象的な演技をした。小柳とは歌番組やバラエティでの共演も数多く、息がぴったり。大竹は、1983年のドラマ「恋人よ、われに帰れ」で沢田と共演したばかり。同作では、日系アメリカ兵を演じた沢田と広島で被爆した女性を演じた大竹との悲恋が描かれた。
ジュリーの恋敵(?)役となる武田、当時「3年B組金八先生」が人気で、俳優としてますます乗っていた頃だ。トップスターだった沢田が、俳優としての充実期を迎えていた武田を相手に、魅力的な3人の美女と共演したというだけでも貴重な作品といえる。さらに、ジュリーの歌唱シーンも必見だ。
沢田の「源氏物語」といえば、1981年に放送されたTBS系ドラマの「源氏物語」がよく知られている。こちらは沢田が情感たっぷりに光源氏を演じ、向田邦子が脚本を手がけた正統派の作品で、沢田の当たり役の1つとなっている。沢田は雅が板についていて、本当に公家役がよく似合った。異色の源氏物語といえる本作の沢田も魅力的だ。
文=渡辺敏樹(エディターズ・キャンプ)
放送情報
ジュリーと鉄矢の“源氏物語'84”
放送日時:2022年1月4日(火)19:30~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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