有村架純と坂口健太郎を主演に迎えた連続ドラマW「そして、生きる」は、題名の通り、"生きる"ことについて考えさせられるヒューマンラブストーリーだ。脚本を手がけたのは有村が主演したNHKの連続テレビ小説「ひよっこ」の岡田惠和。『君の膵臓をたべたい』などの作品でおなじみの月川翔がメガホンをとった。ちなみに有村架純と坂口健太郎が共演するのはドラマ"いつ恋"や映画『ナラタージュ』に続いて3度目。間合いや表情で感情を表現し、切なさを倍増させた本作で2人が演じた役柄とストーリーは、困難が多い今の時代に見るとより心に刺さるかもしれない。
■ボランティアで出会った2人の純愛の行方は?
盛岡で理髪店を営む叔父(光石研)に育てられた瞳子(有村架純)は、地元でモデルとして活躍。タレントを目指して東京のオーディションを受ける前日に東日本大震災が起き、気仙沼でのボランティア活動に携わる。その時に出会ったのが、学生ボランティアとしてリーダーシップをとっていた清隆(坂口健太郎)。2人は被災地での活動を通して惹かれあい、やがて恋に落ちる。
印象的なのは清隆について瞳子が「いつも笑ってるのに悲しい顔だなって」と友人のハン(知英)に言うせりふだ。なぜボランティアに参加することになったのか、その理由を告白するシーンでは、瞳子が3才の時に両親を交通事故で亡くしたことや役者になって叔父を喜ばせたかったことなど、これまでの人生を赤裸々に語る。一方で、経済的に何不自由ない暮らしを送っている清隆もまた、悲しい過去を背負っていることが明らかにされる。
その後、2人は再会。お互いの気持ちを伝え合い、瞳子がモデルになったポスターの写真の前でじゃれ合うシーンはドラマの中で最も無邪気でロマンティック。坂口健太郎のシャイな笑顔と、かわいさの中に芯の強さを感じさせる有村架純の在り方が、物語の行方を示唆しているようだ。
■失意の連続に折れそうになりながらも生きる10年の物語
大学を卒業し、大企業の内定を蹴って国際開発コンサルタントとしてフィリピンで地域の子供たちの抱えている問題に向き合う清隆。再度オーディションに挑戦することを決めるものの、思いがけない出来事に決断を迫られる瞳子。別々の道を歩むことになった2人の道のりは決して平坦ではなく、思い描いていたであろう人生を狂わせていくことばかり。絵空事とは言えないリアリティのある悲劇やすれ違いを淡々と描いているからこそ、本作は視聴者にズシンと響いてくる。涙を流し、傷つきながらも、歩んできた道はすべて自分が選んだことだからと前を向くヒロインは正直で気丈で人間くさい。女性が持つ根源的な強さを提示した有村架純の演技、もがきながらも自分の生き方を模索していく青年を演じた坂口健太郎の心の揺れが伝わってくる表情、佇まいのコントラストもいい。見終わったあと、「そして、生きる」というタイトルについて改めて考えさせられる作品だ。
文=山本弘子
放送情報
そして、生きる
放送日時:2022年3月12日(土)11:30~
チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
詳しくはこちら