蒔田彩珠が確かな演技力を武器に活躍！「朝が来る」で見せた難役を全身全霊で演じる凄み

子役として活動を始め、ヒロインの妹役を好演した2021年度前期連続テレビ小説「おかえりモネ」や、3月末に最終回を迎えた「妻、小学生になる。」など近年特に存在感を発揮している蒔田彩珠。現在19歳の蒔田は確かな演技力を武器に次々と話題作に出演しているが、彼女の飛躍のきっかけの1つになったのが映画『朝が来る』(2020年)だ。

蒔田が報知映画賞助演女優賞や日本アカデミー賞新人俳優賞など多数の賞を受賞し、高い評価を受けた『朝が来る』は、第73回カンヌ映画祭「オフィシャル・セレクション2020」に選出され、公開前から注目を集めていた。直木賞作家・辻村深月の小説を原作に、監督は河瀨直美が務め、主演の永作博美と井浦新、浅田美代子ら実力派が名を連ねる。その中でも蒔田が特筆に価する素晴らしい演技を見せた。

5月18日(水)にムービープラスで放送される本作は"特別養子縁組"によって、新たに芽生える家族の美しい絆と胸を揺さぶる葛藤を描くヒューマンドラマ。永作と井浦演じる栗原夫婦は子どもを持つことを諦めたが、特別養子縁組という制度を知り男の子を迎え入れる。6年後、朝斗と名付けた息子と幸せな日々を送る2人に、産みの母親・片倉ひかりを名乗る女性から「子どもを返してほしい」という電話がかかってくる...。現代の日本社会が抱える問題を深く掘り下げ、家族とは何かを問いかける。決して他人事ではない、安易な気持ちでは見ることができない深く重いストーリーだ。

蒔田は中学生で朝斗を出産した片倉ひかり役を務めた。自らが産んだ実の子を育てることができなかった14歳の少女、子どもを返してほしいと迫る20歳の若い女性。同じ人物ながら、わずかに見える表情や雰囲気からはまったく異なる印象で、6年の歳月を彼女の演技が想像させる。桜の下で見せたあどけない笑顔、少しずつ光を失っていく瞳、我が子の声を聞いて揺れ動く心情...。演じていると言うよりは、ひかりとして生きていた蒔田。朝斗の無垢な声や眼差しに触れたひかりの姿に、心が強く揺さぶられる。

是枝裕和監督作品の『海よりもまだ深く』(2016年)、『三度目の殺人』(2017年)、『万引き家族』(2018年)などで経験を積んでいたとはいえ、『朝が来る』の撮影時はまだ16歳だった蒔田。オーディションで抜擢された本作で、撮影前に登場人物の生活を実際に体験するという河瀨監督流の"役を積む"経験も得た。難役を全身全霊で演じた若き才能の凄みを本作で体感してほしい。

文＝中川菜都美

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